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五輪金のロシア勢・ザギトワ&シェルバコワが来日 複雑な胸中がにじみ出るような圧巻の演技で観客を魅了 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao / ©Fantasy on Ice 2025

【思いがにじむ演技で魅了】

 一方、シェルバコワもこだわりのあるプログラムを見せた。第1部で演じたのは、「これまでとは違った表現をしたい」と自ら選んだ『My Tunnels Are Long and Dark These Days』。イスラエル人アーティストのアサフ・アビダンが、友人からの絶望を伝えるメールに触発されてつくった、「暗闇でも何も恐れることはない」と心にしみ込むような歌声で語りかける曲。

感情がこもった演技を披露したアンナ・シェルバコワ感情がこもった演技を披露したアンナ・シェルバコワこの記事に関連する写真を見る

 しなやかでありながらも、身体に凛とした芯が通ったような滑りのなかにダブルアクセルを入れ、スピードにもメリハリをつけながら感情を心に冷静にため込むような演技だった。彼女の複雑な胸中がにじみ出てくるかのようで、観客もその踊りを静かに見守った。

 そして、城田優とのコラボナンバーである最後の『ダンス オブ ヴァンパイア』では、吸血鬼クロロック伯爵に狙われる宿屋の娘サラを演じた。

 闇のなかでヴァンパイアたちに追いかけられながらも逃げのびたサラだが、伯爵の誘惑に心を許して出かけてしまう。劇中に3度登場するシェルバコワは伸びのある滑りで役を演じると、最後は情熱がにじむ演技で伯爵の下に行ってしまい犠牲になる。

 フィナーレでは、イーグルを見せるザギトワとともに、シェルバコワはきれいなスパイラルを披露。ともに、存在感を見せつける滑りだった。

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著者プロフィール

  • 折山淑美

    折山淑美 (おりやま・としみ)

    スポーツジャーナリスト。1953年、長野県生まれ。1992年のバルセロナ大会から五輪取材を始め、夏季・冬季ともに多数の大会をリポートしている。フィギュアスケート取材は1994年リレハンメル五輪からスタートし、2010年代はシニアデビュー後の羽生結弦の歩みを丹念に追う。

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