アイスショーに坂本花織らトップ選手が集結 五輪シーズンへ虎視眈々 (3ページ目)
【五輪出場をかけたし烈な戦いへ】
世界選手権で日本は、男女シングルでそれぞれ3つの出場枠を獲得した(上位2選手の順位合計が13以内で3枠という条件で、男子は鍵山優真が3位、佐藤が6位で合計9。女子は坂本が2位、千葉が3位で合計は5で同じく3枠)。ペアも、りくりゅうの金メダルでひとつは出場枠を得た。ペアの2つ目、アイスダンスは五輪最終予選で出場権を争うが......。
今後は国内で出場枠を勝ち取ることが、選手たちの目標になるだろう。その争いは今回もし烈だ。
「昨年の世界選手権は7位と悔しい結果に終わっていたので......今シーズンはGPシリーズから結果を残せて、世界選手権で3位はうれしかったです。ただ、自分のなかでは完璧な演技ではなかったですし、課題もたくさん見つかりました。まずは、ショーで堂々と演技して楽しみたいです!」
そう語った千葉も、虎視眈々といったところか。
『スターズ・オン・アイス』の記者発表後、メインリンクではB'zの『ultra soul(ウルトラ・ソウル)』が大音響で繰り返しかかっていた。出演者8人でのグループナンバー。日本のトップスケーターが集結しているだけに、振り付けをすぐに自分の滑りに落とし込んでいった。
全日本選手権で5位と復活を遂げた松生理乃は、小さな体を目いっぱい動かしていた。千葉は長い四肢を生かし、大人っぽさが増したか。世界選手権にも出た樋口新葉と坂本は仲良くじゃれ合う姿を見せ、ライバルを超えた戦友なのだろう。
彼らはシングルスケーターとしては孤独だが、フィギュアスケートという限られた世界で、じつは子どもの頃からどんな競技よりも濃厚につながっている。それが五輪出場をかけ、命を削るような争いになる。明暗は残酷だが、それもいつしか物語になるはずだ。
『スターズ・オン・アイス』はつかの間、全員が氷上でも強く結びつく。ショーは大阪で公演後、4月12、13日には札幌でも行なわれる。
終わり
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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