【世界フィギュア男子】鍵山優真VSイリア・マリニンはSPが勝負の分かれ目 五輪の3枠獲得も油断できない状況
世界フィギュア2025・男子シングル プレビュー
3月26日(現地時間、以下同)にアメリカ・ボストンで開幕するフィギュアスケートの世界選手権。27日にショートプログラム(SP)、29日にフリーが行なわれる男子シングル最大の見どころは、これから最強時代を築いていくだろう"4回転の神"イリア・マリニン(アメリカ)に対し、鍵山優真(オリエンタルバイオ/中京大学)がどう立ち向かっていくか、だ。
前回大会につづき2025年世界選手権で王者を争う鍵山優真(左)とイリア・マリニン(中央)。 アダム・シャオイムファ(右)も表彰台候補だ photo by Kyodo Newsこの記事に関連する写真を見る
【4回転の神はジャンプ構成に注目】
2024年の世界選手権でマリニンは、SPをノーミスの演技としながらも演技構成点が伸びず、宇野昌磨と鍵山を下回る3位発進だった。だが、フリーでは4回転アクセルを含めた6本の4回転ジャンプを入れ、しかも、基礎点が高くなる演技後半にコンビネーションジャンプを3本という構成に。それをノーミスで滑り、合計得点を世界歴代2位の333.76点とし、圧勝していた。
そして今季のマリニンは、初戦のロンバルディア杯でフリーを4回転4本構成で312.55点の優勝。つづくアメリカ、カナダ両大会と連戦になったGPシリーズでは、ミスも重なり、成功した4回転はアメリカが4本、カナダが3本。ともに優勝はしたものの、それぞれ290.12点、301.82点だった。
GPシリーズは昨季も第3戦までの早い時期を戦い、今季も移動に負担のない北米開催の2大会で終わらせていたマリニン。それは、昨年12月のGPファイナル以降の大会に余裕をもって臨もうとする意図だ。
そんな、前季の世界選手権王者の特権を存分に活かしたスケジューリングのなか、GPファイナルでは満を持してフリーで4回転7本構成に挑戦。だが、2本のルッツ、ループともにアンダーローテーション(回転不足)。ほかの4本の4回転も、4分の1の回転不足の「q」判定だった。優勝はしたが、フリーの得点はミスが出た鍵山より低い186.69点で、合計は292.12点という結果だった。
今年1月の全米選手権のフリーでも4回転7本構成に挑み、4本目のループのアンダーローテーションでの転倒と、最後のサルコウの「q」判定以外は成功させた。スピンのレベル4は、最後のシットスピンのみとジャンプに意識が寄った滑りだったが、219.23点を獲得。SPと合わせて合計333.31点の高得点を出している。
マリニンが今回の世界選手権でもそうした難度の高い構成でくるかどうか注目されるところだが、勝負に万全を期すなら、前回大会でもそうしたように4回転の本数を減らして完成度を高めようとしてくるだろう。
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著者プロフィール
折山淑美 (おりやま・としみ)
スポーツジャーナリスト。1953年、長野県生まれ。1992年のバルセロナ大会から五輪取材を始め、夏季・冬季ともに多数の大会をリポートしている。フィギュアスケート取材は1994年リレハンメル五輪からスタートし、2010年代はシニアデビュー後の羽生結弦の歩みを丹念に追う。