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宇野昌磨が語るプロセス重視の哲学「ラクに手に入れたものと苦労して手に入れたもの、同じ結果でも価値が違う」 (3ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【同じ結果でも苦労して手に入れる価値】

ーーフィギュアスケート界で金字塔を打ち立てた高橋大輔さんに対する憧れを公言していますが、高橋さんもすでに『氷艶』や『滑走屋』など個性的なアイスショーを実演しています。

 高橋大輔さんには憧れていたし、尊敬するスケーター。同じくらいの存在になりたいという思いが強いです。今は、自分自身がそう思われる存在になれるようにしたいですね。表現者として、自分がまだまだだってわかっているからこそ、このショーに向けては意気込んでいます。大輔さんが、なぜあれだけ魅力的なスケートができるのか、それを自分なりに言語化して、大輔さんに限らず、いろんなものを取り入れたい。その先にある"自分の表現"を見つけたいと思います。

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ーー最後に、5歳の時に浅田真央さんに「フィギュアスケート、一緒にやろうよ」と誘われて、この世界に入ったわけですが、タイムマシンで当時の"昌磨君"と会ったら、なんと言ってくると思いますか?

 彼は信じられないと思いますね(笑)。スケート以外の道を想像したことはなかったですけど。引退してちょっと経ってわかるんですけど、自分は何事に対しても器用でなく、才能があると思ったことはなくて。「努力家」って言ってもらえることは多いですが、やりたくない時はやらない(笑)。まあ、やる時の思いはすごく強いので、それが才能というなら、そこに才能があったかもしれませんけど。小さい時は、周りの女の子たちが僕より先に"次のジャンプ、次のジャンプ"って跳べていくなか、ひとりだけ跳べなくて。たくさん練習時間を費やして、めちゃ怒られながらやっても、ようやくみんなと足並みをそろえられるか、ちょっと遅れている感じでした。今となっては、よく続けられたなって思います(笑)。

ーー"昌磨君"には何か伝えますか?

 何も言いたくないですね。全部、自分で気づいてほしい。自分で気づいた行動じゃないと、ブレてしまうと思うので。それに、ラクをしてほしくないです。もしラクをしたら、今とは絶対に景色が違うし、ラクに手に入れたものは、苦労して手に入れたものと、たとえ同じ結果でも価値が違う。同じ結果でも、全部苦労して手に入れてほしいです。

終わり

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【プロフィール】
宇野昌磨 うの・しょうま 
プロフィギュアスケーター。1997年12月17日、愛知県生まれ。現役時代には、全日本選手権優勝6度、世界選手権連覇、2018年平昌五輪銀メダル、2022年北京五輪銅メダルなど華々しい成績を残す。2024年に現役引退し、現在はアイスショー出演などプロスケーターとして活躍している。2025年6月〜7月に自身が初めて企画プロデュースしたアイスショー『Ice Brave』を名古屋、新潟、福岡の3都市で開催予定。

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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