宇野昌磨が語るプロセス重視の哲学「ラクに手に入れたものと苦労して手に入れたもの、同じ結果でも価値が違う」 (2ページ目)
【感情が乗る演技にはプロセスが大事】
ーー現役時代、そのシーズンは極度の不振からランビエールコーチとの出会いで一気にスケートの楽しさを取り戻したようでした。2019年の全日本選手権で『Dancing On My Own』を滑って優勝した時、演技中にもかかわらず笑みが見えた気がしました。そこに、真のトップスケーターの矜持を見た気がします。
宇野昌磨(以下同) 競技者としての試合でも、表現者としての舞台でも、チケットを買ってもらってスケートを見てもらうわけですけど......それまでのプロセスが大事だと僕は思っていて。「練習でうまくできたとしても、試合でできなかったら意味がない」って意見もよく聞きますけど、僕はそう思わない。練習の過程って、雰囲気ににじみ出ると思っているので。今回の『Ice Brave』でも、そこはチームとして大事にしたいです。笑みがあふれるっていうのは、練習ができてない人はできないし、試合という極限状態で笑みがこぼれることはないですよね。笑みがあふれるには、過程に理由があると思っていて。『Ice Brave』でもそこは大切にしたいし、過酷なスケジュールになるかもしれませんが、ひとつの大きな目標に向かって成功できるように。最初は努力であっても、いずれは努力ではなく、"やりたいイコール楽しい"になって、そうやって積み上げた先にショーがあると思います。そういうショーは感情も乗っているはずで、見に来る人も感情が動かされると思います。
ーー「今はやりたいっていう気持ちで『Ice Brave』と向き合えています」と話していました。現役時代も情感に訴えるプログラムが多かった印象です。
現役の時は、言われたからやる、やらないといけないからやる、というところもなかったわけではなくて(笑)。でも、2年くらいは、やりたいって言いきれる感情になれたと思います。誰かに止められるまで、とことんやるっていうか......北京五輪の前シーズンの(2021年)世界選手権で、4位になったんですけど、練習ではもっと悪かったから、結果自体は悔しくなかったんです。でも、(鍵山)優真君が2位だったと思うんですけど、「憧れの存在は昌磨君」って言ったのが、めっちゃ恥ずかしくて(笑)。悔しかったし、でも悔しいからがむしゃらにやる、じゃなく、やりたいことを冷静にやる、と。2年くらいは成長を実感できました。
ーー火がついた?
ただただ、うまくなりたいって思いましたね。それで過去に跳べたことのあるジャンプを全部詰め込んで。(2022年、2023年の)世界選手権で連覇することができたんです
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