高橋大輔コーチがフィギュアスケート期待の若手に伝えた細部の美学「地味な練習を始めまーす」 (2ページ目)
【長くスケートを続けてほしい】
以前、高橋は「コーチになったらすごく細かいと思う」と話していた。全体練習後の囲み取材で実際にコーチングをした感想を聞くと、「1対1でやったらもっと細かく言ってると思う」と笑ったあとにこう続けた。
「ただ、本当にそれくらいの時間がほしいなと思うくらい、いいものを持っている子たちがたくさんいる。こうやって関わることができて、少しでも素敵になってくれたところが見えたりするとすごくうれしいので、参加させていただいてうれしかったですね」
さらに、細かく指導していたスケーティングのこだわりについて聞くと、高橋は笑顔でこう話した。
「(こだわりに)妥協点はないと思う。ただ、選手はルールのなかでやることがたくさんあるので、どれを優先するかというと、ポイントが高い技術が一番になると思う。でも、長くスケートを続けていきたい、今後アイスショーに出ていきたいという目標があるのなら、スケーティングのテクニックを持っていたほうが長く続けていけると思います。身体がまだかたまりきっていない(ジュニアの)うちにそういったところを頑張っておくと、のちのちラクになってくる。
僕自身、(今回の合宿に参加した選手たちも)本当に長くスケートをしてほしいと思っていますし、ジャンプも跳べるしスケートもきれいなスケーターが生まれてくるとうれしいです。(今回の合宿における合格点は)次の日に言ったことをちゃんと気にしているなってわかる練習をしてくれたら合格かな。もうそれが気づきなので」
自身の経験から、「ふだんから(それぞれの選手が指導を受けている)先生がおっしゃっていると思うけれど、毎日聞いていると耳に入ってこないこともある。だから、たまに"よくわかんない人"が来て言ってくれたら『はっ!』となることもあると思う」と高橋は言うが、ジュニアスケーターたちはレジェンドスケーターの一挙手一投足を見逃すまいと、真剣な眼差しで高橋の手本を見つめていた。
世界で戦うシニアのトップ選手も憧れる高橋の技術が、若いスケーターたちに受け継がれていく。
著者プロフィール
山本夢子 (やまもと・ゆめこ)
スポーツライター。青森県八戸市出身。5歳からフィギュアスケートを習い始め、高校卒業まで選手として各大会に参加。その後、渡米し大学を卒業、就職。帰国後は、コピーライターとして広告制作に携わる。2005年からフリーランス。現在はライターとしてフィギュアスケートの専門誌を中心に執筆中。
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