小説『アイスリンクの導き』第13話 「抽選会」 (4ページ目)

 翔平が言うと、陸と宇良が同時に頷いた。

「お前ら、仲良しこよしでいいな。勝つのは一人だけなんだよ」

 3人の後ろで、富美也が行った。椅子に浅く座って、腕組みしながら胸を反らしていた。絵に描いたような不遜な態度だ。

「富美也、そういうのは僕に勝ってから言えよ。グランプリファイナルだって、負けたばかりだろ」

 陸が振り向いて言い返した。

「俺が歩くのもきついほどケガしていたのに、あんた、負けそうだったじゃん。俺は全日本、世界選手権の優勝に向けて、体力を温存しただけ。グランプリファイナルなんて、大したことない。日本で盛り上がるのは全日本だし、世界王者の方が偉いだろ」

 富美也はふてぶてしく言って鼻を鳴らした。

「負けた言い訳すんな。それに去年も、全日本は僕が優勝したんだけどね」

「今回は、かなわない、って思い知らせてやるよ」

「そうやって、いつもピリピリしているから、福山凌太コーチだって辞めたんじゃない?」

「何だと? もう一回、言ってみろよ!」

 富美也が顔を赤くした。

「ちょっと、そこの君たち、さっきからうるさいですよ」

 係員が睨みながら叱った。陸も、富美也も、不満げにそれぞれ横を向いた。係員が続けて呼んだ。

「三浦富美也さん、21番」

「星野翔平さん、23番」

 第4グループ、最後から2番目のグループだ。

「飛鳥井陸さん、29番」

 最終グループ、最終滑走が決まった。4日後には、決着がつく。

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