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青木祐奈、本田真凜らフィギュアスケーターの光と影 戦いは全日本選手権へつづく (3ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki

【優勝にも立ち止まらない】

「東日本の初優勝はうれしいですが、フリーは自分が満足いく内容ではなかったし、悔しくて、思っていたのと違うなって」

 そうはっきりと語ったのは、優勝した青木祐奈(日本大)である。トータル179.40点で2位に15点差以上つけての完全制覇だったが、昨年の全日本は191.89点をたたき出して7位に入っているだけに、立ち止まってはいられないのだろう。

 今月11月のNHK杯にも出場するが、セカンドのループを得意とするなどスコアの積み上げ要素のある選手だけに、今後どこまで仕上げられるか。

「NHK杯には今も出る実感がなくて。これから3週間、準備する時間があるので。たくさんの方に成長した姿を見てもらえるようにしたいです」

 青木は、学生最後の大会に挑む。彼女だけの物語があるはずだ。

 大会会場は、入場無料で玄関の通路は誰でも通れるだけに、ファンも含めて人でごった返していた。競技後、戦い終えた選手同士、その家族や関係者が集い、そこかしこで話に花が咲いているようだった。ひとつの宴の終わりのようでも、始まりのようでもある。

 会場の外はすっかり、日が暮れていた。暗がりに動く、いくつもの影があった。女子の次に始まった男子の順番を待つ選手たちが、夜の寒さを吹き飛ばすように汗を流していた。電灯の光に映した影が旋律に合わせるように動いて、地面を蹴る音がざっと鳴った。

「ひゅうひゅうひゅう」

 縄跳びが空気を裂く音が重なり、あたりに響いていた。彼らが全日本への道を行く番だ。

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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