女王・坂本花織をしのいで優勝の吉田陽菜、20カ月ぶりに復帰した白岩優奈ら女子フィギュアスケートは百花繚乱 (4ページ目)
【吉田陽菜はトリプルアクセルを成功】
そして大会を制した吉田陽菜(木下アカデミー/17歳)は、意気軒昂でシニア1年目に挑む。SP6位からフリー1位での逆転優勝。大技トリプルアクセルをフリーで成功したのは大きかった。
「(ジュニアまでは)ジャンプで戦ってきましたけど、少しでもスケーティングで戦えるように。それで前に進めるかなって」
そう語る吉田は、SPの『Koo Koo Fun』で独特のリズムを自分のものにしつつある。個性的なプログラムで可能性を広げている。トリプルアクセルを失敗したが、「挑戦する立場なので」と意欲的なスケーティングで観客を引きつけた。
その姿勢が、大逆転のフリー『Shakuhachi/La Terre vue du ciel』での演技につながったか。鶴になりきっていた。
「鶴がテーマのプログラムなので、(振付師ローリー・)ニコルさんと動画を見て、このイメージかなって一個一個、振り付けしてきました。自然のなかで飛んでいる鶴、歩いている鶴、いろいろ研究しながら。
曲を通して、鶴のポーズがたくさん入っているんですが、そのポーズが少しでも鶴に見えるように。特にステップで曲調が変わって盛り上がるところは重点的に」
朗らかに語った吉田は、1週間後(8月21日)が誕生日だという。
「お肉は少し早い誕生日プレゼントで、家族と一緒に食べます!」と白い歯を見せた。「木下トロフィー」に続いての優勝だ。
「大人になった自分を見てもらえるように頑張ります!」
ルーキーは戦いを重ねて、変身を遂げる。
女子フィギュアスケートは、他にも渡辺倫果、千葉百音、松生理乃が上位に食い込んでくるはずで、樋口新葉、紀平梨花も再起に挑む。
世界女王の坂本、グランプリファイナル女王の三原舞依のふたりだけではない。百花繚乱のシーズンの開幕だ。
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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