女王・坂本花織をしのいで優勝の吉田陽菜、20カ月ぶりに復帰した白岩優奈ら女子フィギュアスケートは百花繚乱 (3ページ目)
【住吉りをんに飛躍の予感】
「メンタル」
住吉りをん(オリエンタルバイオ・明治大/20歳)は、しばしば自身の課題をそう口にしてきた。ただ、彼女にひ弱さは感じられない。豊富な感情量を持て余していただけではないか。
「(げんさんサマーカップ直前に開催された)『木下トロフィー』(の演技)がすごく悔しくて。氷に合わせられず、練習してきたことを出せなかったので。それを今日は活かし、教訓にできました。6分間練習で氷の感触をチェックして、いい演技ができました」
住吉はそう説明していたが、その反骨は彼女のエネルギーと言える。SPでは坂本花織を抑えて、69.63点でトップに立った。ステップ、スピンはオールレベル4で、特に最後のスピンでは指で韻を結びながら舞い踊る様子が、モダンインディアンの曲調と衣装も相まって幻想的だった。
それでも、彼女は「70点に乗せたかった」ともの足りなさそうにも見えた。
「踊り出した時、(曲の)音が小さかったのが気になって。ただ、ダブルアクセルを跳んでからは集中してできました。残り2つのジャンプにもつながったかなって」
そう語る彼女は、勝負への気概が強いのだろう。それが浮き沈みにもつながるが、情念の強さはスケーターとしての肖像も象(かたど)る。トリガーを引けたら、代名詞となるプログラムをつくり上げ、飛躍する予感がある。
フリーでは昨シーズンも使った『Enchantress』をバージョンアップさせ、観客を魅了した。両足着氷になったが、4回転トーループにも挑戦。演技後、自ら二度、三度とうなずき、手応えが伝わってきた。惜しくも優勝は逃したが、伸びしろを感じさせ、次につながる準優勝だ。
「(優勝者に贈呈の)お肉はないし、2位は一番悔しいなって。でも、演技は去年よりはるかに成長しているので。順位にこだわらず、喜べる内容でした」
いよいよ、住吉が羽ばたく。
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