女王・坂本花織をしのいで優勝の吉田陽菜、20カ月ぶりに復帰した白岩優奈ら女子フィギュアスケートは百花繚乱

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Kyodo News

げんさんサマーカップを制した吉田陽菜げんさんサマーカップを制した吉田陽菜 8月、滋賀。シーズン前哨戦「げんさんサマーカップ」で、彼女たちはしのぎを削っていた。それぞれが抱える異なる情念が、リンクを華やかに彩った。

【白岩優奈は久々の演技で「幸せ」】

ーー20カ月ぶりにリンク(実戦)に戻ってきた気持ちは?

 白岩優奈(関西大/21歳)は記者の問いに、弾けるような笑顔で返した。北京五輪シーズン、右足の痛みの治療で戦線離脱。復活した彼女は「滑れる今」を全身で噛みしめていた。

「楽しかったです! 戻ってきて、本当によかったなって。たくさんの(応援)バナーが見えて幸せだなって」

 今年2月、久しぶりに氷の上に立った。「1年休むと、この感覚か......」と愕然とした。3月、イベントでスケートを披露。4月末、ジャンプをどうにか跳ぶようになった。本来の姿にはほど遠いが、今回、舞台に立てた。

「まだ滑り込みが足りていないので、次は今日よりもいい演技ができるように。近畿(選手権)、(大学)インカレと一個一個の試合を重ね、自分の弱さとも向き合っていきたいです。(休養中に)メッセージとかをくれた方々に、最後まで自分のスケートを見てもらえるように」

 そう語った白岩は、感謝を力に変える。事実、フリーは序盤にジャンプのミスが続いたが、観客の熱烈な拍手に励まされると、後半のジャンプは立て直した。

 氷上に戻ってきた白岩は、どんな輝きを見せるのか?

1 / 4

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る