三原舞依「ここにいられて幸せだなって」 最多13試合を終えて坂本花織と流した感謝の涙 (4ページ目)
●「ここにいられて幸せだな」
4月14日、リンクに入った三原は、前の順番の選手の点数が出るのを待ちながら、氷の感触を確かめていた。手でおでこをたたき、ひとつ大きく息を吐く。
「6分間練習に入る前、(キム・)イェリムちゃんが完璧な演技をして、ガッツポーズとか、うれし涙を見られて。
今シーズンは、いろんな大会で一緒にやってきたので、本当によかったなって思いました。リプレーで見た3・3(連続ジャンプ)もすごくきれいで。イェリムちゃんの演技に、一歩踏み出すパワーをもらいました」
そう語った三原は、人に共感することでエネルギーを得られる。フリースケーティング『恋は魔術師』は象徴的な演技になった。
ダブルアクセルを着氷したあと、3回転ルッツ+3回転トーループのコンビネーションも降りた。3回転サルコウ、3回転フリップ、ダブルアクセル+3回転トーループ、3回転ルッツ+2回転トーループ+2回転ループと、回転不足はあったが、いずれも成功。
最後の3回転ループは転倒になったが、立ち向かう姿勢が彼女らしかった。
「ループは得意なジャンプなので悔しくて。空中でゆがんでいるのがわかって、いつもなら抜けていたところですが、何が何でも(体の軸を)締めてチャレンジしようって。チャレンジ自体はよかったし、次につながると思うんですけど」
最後のステップからスピンへの流れで、彼女は観衆の拍手喝采を浴びた。131.21点で5位は、GPファイナル女王としては不本意だろうが、それ以上の価値があった。
「観客席にパワーを送ってくださる方々が大勢いて、拍手であるとか、『舞依ちゃんガンバ』の声援であるとか、一つひとつがぐっと心のなかに入ってきて。
ここにいられて幸せだなって、最初から最後まで強くいこうと演技に臨むことができました」
三原は感謝の思いを口にした。それが口先だけではないからこそ、力に変換できる。坂本と一緒に流した涙も同じ回路だ。
「来シーズンは前半だけでなく、後半も右肩上がりのグラフになるように、コンディショニングや体力づくりもやっていきたいと思います!」
三原は決意を口にした。2023−2024シーズンに備え、英気を養う。
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著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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