三原舞依が「自分の人生を表している」プログラムで挑む世界フィギュア。「自分の底力を、マックスの演技を見せられるように」
●世界選手権は「100楽しむ」
3月20日、さいたまスーパーアリーナ。フィギュアスケートの世界選手権、開幕を前々日に控えた公式練習だった。
リンクでは女子選手たちが胸を躍らせるように闊達(かったつ)に滑り、その舞台に立つ誇らしさも感じさせ、一方でくるべき大舞台の緊張感もほのかに漂っていた。
世界選手権の公式練習で調整する三原舞依この記事に関連する写真を見る「一瞬一瞬を楽しんで滑りたいです。今シーズン、一緒に滑ってきたプログラムたちの集大成になるので」
練習後のミックスゾーン、三原舞依はそう言って決意を込めた。
声音は可憐で、柔らかい。言葉の端々にも、彼女らしい愛らしさがあった。
たとえば、プログラムを「プログラムたち」と表現する様子は、自分の分身を語るようでも、同志を語るようでもあって、慈愛に満ちた性格と言えるだろう。
一方、彼女は内奥に一本気な強さを感じさせる。自分だけの律動がある。
「集中力の鬼」
そう言われるのも、真実の姿だ。
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著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。