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坂本花織がGPファイナルで味わった天国と地獄。ワースト記録に「もうこれっきりにしたい」 (3ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • photo by Joosep Martinson - ISU via Getty Images

【「気づいたら最後まで終わっていた」】

 そのフリー『Elastic Heart』では、最初のジャンプに行く前から「おやっ」という場面があった。持ち前のスピードに乗ったスケーティングでつまずいたのだ。そこからすぐに立て直して得意の2回転アクセルを跳んだ。GOE加点で1.23点がつくいつものジャンプだったが、その表情は硬いままだった。

 すると2本目の3回転ルッツがステップアウトして着氷が乱れ、5本目の3回転フリップが2回転になるミスに。3連続ジャンプでは2回転トーループを余計に跳んでしまって無得点となり、最後の3回転ループは1回転のパンクになった。2本のスピンでレベル4判定が取れず、3本のジャンプでGOEで減点された。

 その結果、フリーは116.70点となり、何と最下位に沈んだ。合計でも192.56点で総合5位に。これは17年-18年シーズンのGP初陣のロシア杯でマークした194.00点よりも低く、シニアになってからワーストである。

 フリー後の取材エリアでは悔し涙は見せず、不甲斐ない出来に厳しい表情の坂本は淡々とこう話した。

「今日はずっと地に足がついていない状態だなと感じていました。とにかくこの結果は受け入れるしかない。(敗因は)精神的な面と練習の積み重ねの面の両方かなと思っています。フリーは最近、スピンやステップを抜いたりしないと最後までプログラムを滑りきることができないということがあったので、それを練習でやっていると、試合で最後まで続けられないとずっと感じていました。やっぱりそれが課題だなとあらためて思ったし、途中から体の動きが鈍いなとずっと思ってやっていたら、気づいたら最後まで終わっていた感じだった。こういうことは、もうこれっきりにしたいなと思います」

 世界女王としての挑む今季は、人知れぬ重圧を感じながら戦っていることは想像に難くない。周囲の期待も自身の責任感もしっかりと受け止めて、次なる目標に向かっていけるのか。シーズン前半戦のクライマックスとなる全日本選手権は今月21日に開幕する。

「すぐに全日本選手権が迫ってくるので、それに向けて切り替えて前向きにできたらいいなと思っています」

 気持ちを切り替えることさえできれば、大会2連覇の可能性も十分にある。どんな戦いを見せてくれるのか、楽しみにしたい。

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