樋口新葉、苦難の末にフィギュアスケート女子五輪史上5人目の快挙。4年後への意気込みも明言した (2ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • 能登直/JMPA●撮影 photo by Noto Sunao/JMPA

【「倍返し」を誓った4年間】

 フリーは、思い入れを持って滑り込んできたお気に入りのプログラム曲『ライオンキング』で勝負をした。トリプルアクセルはキレのあるジャンプを跳べたものの、SPと同じように連続ジャンプの2本目で転倒したり、回転不足の「q」マークがついたり、3回転フリップで不正エッジを取られたりと、取りこぼしを重ねてしまい、得点は140.93点にとどまった。それでも合計214.44点は自己ベストだ。

 合格点とまではいかなかったフリーを、樋口は少し複雑な面持ちで振り返った。

「いつも転ばないところで転んじゃったんですけど、それでも最後まで集中をきらさずに、独特な雰囲気を楽しみながら滑れた。最初はすごくふわふわした気持ちだったけど、自分の夢だった舞台でしっかりと初めてSPとフリーでトリプルアクセルを成功させることができ、うれしい気持ちと悔しい気持ちを両方味わえたので、すごくよかったなと思います。

 残り1試合(3月の世界選手権)ありますけど、次の試合では完璧に演技したいし、シーズンベストを更新したい気持ちがあります。今回のことを忘れずに、もっと成長していけたらいいなと思っています」

 4年前の平昌五輪シーズンは、序盤こそ好調だったものの、五輪代表最終選考会の全日本選手権で惜しくも表彰台を逃して、五輪出場は夢に終わった。当時、流行っていたドラマの主人公の決め台詞にならって「倍返し」すると誓った4年間だった。ケガに悩まされたり、成績が低迷したりして気持ちが折れたこともあったが、大技のトリプルアクセル習得を再開させたことでやる気を呼び起こした。

 ここまで決して順風満帆な競技生活ではなかったが、それでも立ち止まることなく、半歩でも前に進む気概でフィギュアスケートに打ち込んできた。そして、ついに掴んだ北京五輪代表の座だった。

 初めての五輪は樋口にとって、楽しさもほろ苦さもあっただろう。この経験は今後の競技生活に必ず生きてくるはずだ。

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