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ドーピング問題を経てワリエワが五輪出場へ。騒動で精神状態が気になるなか、4歳からの夢の実現に挑む (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直/JMPA●撮影 photo by Noto Sunao/JMPA

 SPでは『In Memoriam』をしめやかに滑りきった。「追悼して」という意味の曲で、亡き祖母に送ったプログラムだと言われる。ピアノの静かな音に、ゆっくりとたぎる情感を込めた。

 冒頭、トリプルアクセルは難なく決めたが、五輪女子史上4人目の成功者である。芸術性を表すプログラムコンポーネンツ(演技構成点)でも、パフォーマンスの項目は9人中4人のジャッジが10点満点を記録。周りを圧倒させるほどの強さから「絶望」と言われる少女だが、そのスケーティングは栄光に満ちていて、すべてが規格外だった。

 90.18点で首位に立ち、2位の樋口新葉に15点以上の差をつけている。そして、フリーでも再びリンクに立って、『ボレロ』で女王の進軍のような気高さと迫力を見せた。

団体戦フリーのワリエワ。4回転ジャンプを繰り出した団体戦フリーのワリエワ。4回転ジャンプを繰り出したこの記事に関連する写真を見る 冒頭の4回転サルコウは完璧で、GOE(出来ばえ点)が4.02点と比類がない。トリプルアクセル、4回転トーループ+3回転トーループと高難度のジャンプを次々に成功。4回転ジャンプの成功は五輪女子初だ。後半の4回転トーループは珍しく転倒したが、そのあとのジャンプに2つ目、3つ目のジャンプをつけ、見事にリカバリーした。失敗してもうろたえない精神的強さも際立った。

 技術点だけで2位の坂本花織に30点近く差をつけ、178.92点でまたも1位を手にした。スピン、ステップは当然のごとく、すべて最高のレベル4。別次元の演技だった。4回転を軽々と跳び、全身を躍動させる姿は、他の惑星からやって来たようにも見えたほどだ。

しかし演技後、応援席で待つロシアのチームメイトたちに囲まれ、得点発表を待つ間に見せる表情は15歳の少女だった。演技直後、4回転での転倒を悔しがっていた様子だったが、励ましに気を取り直したのだろう。両手を高く上げて、丸を作るようにして指を頭頂部に立て、ハートマークを一緒に作って、満面の笑みになった。

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