羽生結弦「らしい質問ですね」。会見のやりとりと北京の演技を通じて記者が感じた夢を追う生きざま

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直/JMPA●撮影 photo by Noto Sunao/JMPA

2月14日、取材希望多数のため記者会見に応じた羽生結弦2月14日、取材希望多数のため記者会見に応じた羽生結弦この記事に関連する写真を見る

【ケガのなか挑んだ演技の満足度】

 2月14日、北京五輪の報道陣の取材拠点となるメインメディアセンターで行なわれた羽生結弦の記者会見。通常、大会後には日本メディアに向けた囲み取材を行なうのが恒例になっているが、今回はコロナ禍の状況を踏まえ、密を避けるために広い会場を使用した。そのため、中国メディアも大挙して押しかけ、開始前に「どういう会見か」と質問されるほどだった。

 日本メディアの質問が主になったこの会見。ここで知りたかったのは、大会期間中に右足首をねんざし「普通の大会だったら、完全に棄権をしていたと思う」と言う状態のなかで挑戦した演技に、彼がどのくらい満足しているかということだった。

 会見の中盤を過ぎた頃にそれを問うと、羽生は「らしい質問ですね」と言ってから丁寧に答えてくれた。

「ショート(・プログラム)ははっきり言って、すごく満足しています。ショートでは最初のジャンプでミスをしてしまったりトラブルがあったりとか、何か氷に嫌われてしまうというか......。実際、転倒ではなくミスにつながらなかったとしても、ガコッてなることはたまにあるんです。でも、そのあとは崩れず、ちゃんと世界観を大切にしながら自分の表現したいことができ、プラス、いいジャンプを跳べた。そういう点ではすごく満足しているショートでした」

 SPの演技直後にミックスゾーンで羽生を取材した時、ミスをしたあとの演技について「きょうは感情を抑えていたのではないか」と聞いた。羽生は「抑えるというよりも、やっぱり何ですかね......。何かを見た時に、ちょっとひとつの欠片が崩れているだけで、完成されなく見えてしまうんじゃないかと思います。しょうがないですね」と答えた。

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