羽生結弦のメンタルコントロールのすごさ。世界最高得点を連発した当時の思い (2ページ目)
だが、いい結果を出せば出すほど、周囲の期待は高まる。「ノーミスの演技は毎回のようにできるものではない」と話していたが、この記録が、これから自分自身にのしかかってくることも羽生は認識していた。そんな状況で再度歴代世界最高得点を更新した次の15年12月のグランプリ(GP)ファイナルは、彼のメンタルコントロールのすごさを証明するものだった。
「NHK杯の時は『やったー!』と素直に喜べたんですが、今回(GPファイナル)は『よかったー!』という感じですね。何かホッとしたというか、安堵感というか......。そういうものがちょっとありました」
GPファイナル男子フリーで、NHK杯の得点を上回る219.48点を獲得し、合計も330.43点に伸ばしてこう語った。
出番を待っている間、前の選手一人ひとりの演技へ送られる大歓声が聞こえていた。直前のハビエル・フェルナンデス(スペイン)が出した、史上2人目の200点超えには焦りさえも感じた。だからこそ自分の演技に対して出された得点を目にした時、あらためてプレッシャーと戦っていたことを思い、「やっと終わった」との安堵感とともに涙が流れ出てきた。
大会直前には怖さも感じていた。NHK杯の結果を考え、「今回も同じような演技をして優勝しなければいけない」と、そんな気持ちになっていた。GPファイナルSPでの自己最高を上回る110・95点獲得がさらに拍車をかけた。しかも、その演技は要素を完璧にこなすだけではなく、『バラード第1番ト短調』という、ピアノ曲の旋律をそのまま表現して、自らが発する力強さまで加えた完成された演技だった。
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