2021.07.26

羽生結弦が失意から立ち直れた理由「ファンやコーチが信じてくれた」

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

『羽生結弦は未来を創る〜絶対王者との対話』
第Ⅵ部 類まれなメンタル(5)

数々の快挙を達成し、男子フィギュアスケートを牽引する羽生結弦。常に挑戦を続ける桁外れの精神力と自らの理想を果敢に追い求める情熱を持つアスリートの進化の歩みを振り返る。世界の好敵手との歴史に残る戦いや王者が切り拓いていく未来を、長年密着取材を続けるベテランジャーナリストが探っていく。

2017年世界選手権、羽生結弦はSP5位からフリーで逆転勝利を果たした2017年世界選手権、羽生結弦はSP5位からフリーで逆転勝利を果たした この記事に関連する写真を見る
 2018年平昌五輪に向け、重要な意味を持っていた五輪前年の、フィンランドで開催された世界選手権。そこでは国別の五輪出場枠獲得がかかるだけではなく、勝利すれば翌シーズンへ向けての自信とともに、他の選手たちにプレッシャーを与えられることにもつながる。

 その大切な2016−17シーズン、羽生はショートプログラム(SP)に『レッツ・ゴー・クレイジー』、フリーに『ホープ&レガシー』という、新たなプログラムを選択。SPはロック調で観客とコネクトする、ライブ感のある演技を目指すもの。そして、フリーは自らの心象風景を静かに表現する。その性質の違うふたつのプログラムを演じ切りたいとの思いがあった。

 ジャンプの構成は前シーズンより難度が高く、SP、フリーともに4回転ループを入れた。世界選手権前までに5試合を戦い、グランプリ(GP)ファイナルを含め3勝という結果は出していたものの、SP、フリーともノーミスの完璧な演技はできていなかった。

 その世界選手権のSPでは最初の4回転ループをしっかり決めたが、次の4回転サルコウの着氷でバランスを崩して左膝を着くミス。その後に2回転トーループをつけたものの連続ジャンプと認定されず、98.39点で5位スタートになってしまった。