2021.07.19

羽生結弦のメンタルコントロールのすごさ。世界最高得点を連発した当時の思い

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

『羽生結弦は未来を創る〜絶対王者との対話』
第Ⅵ部 類まれなメンタル(4)

数々の快挙を達成し、男子フィギュアスケートを牽引する羽生結弦。常に挑戦を続ける桁外れの精神力と自らの理想を果敢に追い求める情熱を持つアスリートの進化の歩みを振り返る。世界の好敵手との歴史に残る戦いや王者が切り拓いていく未来を、長年密着取材を続けるベテランジャーナリストが探っていく。

2015年12月のGPファイナルSPの羽生結弦2015年12月のGPファイナルSPの羽生結弦 この記事に関連する写真を見る
「自らの失敗の経験を活かす」

 羽生結弦がそう口にしたのは、2015年11月のNHK杯だった。4回転ジャンプを2本入れる構成に初挑戦したショートプログラム(SP)で自身が2014年ソチ五輪で出した歴代世界最高得点を4.88点上回る106.33点を出した。そして、その後のフリー。史上初の合計300点台突破は、周囲のみならず、自身も期待するものだった。

「ソチ五輪では(フリーの)演技が終わった瞬間、『これで優勝がなくなった』と思いました。その時に、自分が金メダルを意識して緊張していたと気がついたんです。その経験が今回のNHK杯ではすごく活きて、会場に来る前から、『自分は300点超えをしたいと思っている』『ノーミスをしたいと思っている』というふうに、自分で自分にプレッシャーをかけてしまうようなことを考えていると認識できていた。『緊張しているんだな、それならこうしよう』と意識できました」

「一番よかったのは、コントロールできた精神状態でフリーの演技ができたこと」と振り返った羽生は、それまでの最高点を19点以上も上回る216.07点を出し、合計を322.40点にしたのだ。