羽生結弦はチェンとの死闘でまた一歩強くなった。目指すべき道が明確に (3ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 12月5日からのGPファイナルは、「体調の回復に努め、締めるところだけ締めてきた」と、落ち着いた表情で臨んだ。だが、誤算もひとつあった。ジスラン・ブリアンコーチがアクシデントで一度帰国したため、トリノ入りが遅れたのだ。

 コーチ不在となったSPは、ネイサン・チェンが自己最高の110.38点を出したあとの演技で、力みが出た。だが、「彼の得点は頭に入っていたし、意識もしていました。でも、ちゃんとやれば超えられる可能性はあると思っていたので、きれいな演技をすればいい、と開き直っていました」と話したとおり、出だしの2本のジャンプは自信に溢れた出来で、高い加点にした。

 しかし、「うまく音にハマらない」と不安を持っていた連続ジャンプは、最初の4回転トーループで着氷を乱して単発になった。それ以外は「すごく音楽にも乗っていたし、気持ちを決めて滑れた」と言う演技だったが、97.43点に止まった。

 公式練習から好調さを見せていたネイサン・チェンに勝つための必要条件は、SPでリードを奪ってプレッシャーをかけることだった。その立場が逆転する状況になってしまった羽生は、フリーでルッツを入れる4回転5本の構成に挑戦せざるを得なくなった。

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