羽生結弦らトップスケーターの「ジャンプの技術」を中野友加里が語る (3ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • 中村博之●写真 photo by Nakamura Hiroyuki

 その点でも羽生選手は第一人者です。

 四大陸選手権のショートプログラム『バラード第1番』は、すべての流れを壊さずに演技全体をまとめるという意味で、すばらしかったと思います。バイオリンよりもピアノのほうが音を拾うのが難しいものなのですが、ピアノの音色を崩さずに、ひとつひとつの要素をこなしていく。そのひとつひとつに見入ってしまう、パッケージ感があるプログラムでした。スケーティングが美しく、ジャンプもすばらしいのですが、それぞれが別個にあるのではないところで高い評価を得ているのだと思います。

 一方、ライバルのネイサン・チェン選手(アメリカ)は、やはり踊りに目を見張るものがあります。アジア系の人はダンスがうまくないと思われがちですが、そんな定評を完全に覆しました。身体がどうなっているんだろうと思うぐらいの細かいリズミカルな動きを、指先まで神経を行き届かせて見せてくれます。それをこなしながら、多種類の4回転ジャンプを跳ぶのが彼の強さでしょう。

 そのジャンプは、ちょっと体操を連想させるところがあります。彼がもともと体操をやっていたことと関係があるのかもしれませんが、腕の締め方などにそれを感じます。

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