紀平梨花は自分に合格点。正念場の来季は4回転ジャンプ習得も目指す (3ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 ただ、フリーでのジャンプミスはこの1つだけで、それ以後のエレメンツ(技)のほとんどには1点以上のGOE(出来栄え)加点がつく演技を見せて152.59点をマーク。これはフリートップのザギトワに迫る高得点だった。技術点では82.63点と、ザギトワを抑えてトップの得点を出しており、その潜在能力の高さは本物と言えるだろう。

 演技終了直後、紀平は「まぁ、よかった」とつぶやいた。その理由を尋ねると、「『まぁ』がトリプルアクセル2本目(の失敗)で、『よかった』が(演技)全体という感じです」と笑った。

「トリプルアクセルの感覚がしっかり染み付いていたわけではなかったので、丁寧に慎重になってしまったかもしれないんですけど、(冒頭の大技は)ちゃんと決めることができたし、今回は3+3にしようという気持ちがあって、2本入れたいという思いもあったので、そこには悔いはないし、全体を通していい演技ができたと思います」

 シニアデビューの今季、世界選手権だけが表彰台を逃す総合4位。3位とはわずか0.31点差だった。シニア1年目でこれほどの活躍できたのは、浅田真央以来と言っていいだろう。そんな1年目のシーズンを、紀平はこう振り返った。

「本当にいいシーズンだったなと思います。でも、まだ目標はもっと高いところなので、もっともっといい成績を出せるように、ここで満足せず、どの試合でも『これはやり切った』と思えるように波のないシーズンを続けて、(2022年北京)オリンピックまでいきたいと思います。あとは絶対にケガをせず、毎日できる限り努力して、ケアをたくさんして体作りをしていきたいと思っています」

 次の五輪までは3シーズンあるが、体の変化が顕著になるシニア2年目の来季は、紀平が世界的トップスケーターとしての地位を確立できるかどうかの、正念場のシーズンになるに違いない。4回転ジャンプ(おそらくはサルコウ)の習得も目指すという彼女がどんな成長を見せるか、楽しみだ。

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