落ち着いた羽生結弦。転倒も「GPシリーズ開幕戦初勝利」の起爆剤に (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 そのチェンからひとりおいて、第2グループ6番滑走で羽生の演技がスタート。最初の4回転ループは着氷が乱れて回転不足と判定されたが、次のスピンふたつをレベル4にし、後半に入ってからのトリプルアクセルは全ジャッジがGOE(出来ばえ点)3点をつける完璧なジャンプだった。今季初戦のオータムクラシックのSPで110点を超える得点を記録した羽生にとって、チェンの得点は脅威にはならないものと思えた。

 だが、次の4回転トーループは着氷で少し尻が下がってしまい、セカンドの3回転トーループは練習時のように両手は上げず、両腕をしっかり締めるジャンプに。なんとか窮地を脱したかに見えたが、着氷でブレードが後方にうまく抜けず、思わぬ転倒となってしまった。

「4回転トーループのあとで迷ってしまったのが問題かなと思います。少し慎重にいってしまいました。4回転トーループ自体は悪くないジャンプでしたが、次を手を上げるジャンプにするには少しスピードが足りないかなと考えて......。一瞬のちょっとした迷いがあったことで、バランスを崩したんだと思います」

 結局、そこでの点の取りこぼしが響き、SPは94・85点でチェンに次ぐ2位発進。それでも、羽生は演技終了後に笑みを浮かべていた。

演技後、氷上で笑顔も見せていた羽生演技後、氷上で笑顔も見せていた羽生「もちろん悔しい思いもありました。ただ、演技後の表情を見てもわかると思いますけど、感覚的にはそんなに悪くない失敗のしかたをしているので......。集中してやることはできたなという感じです。もちろん自分の中ではGPシリーズ初戦という緊張感みたいなものもありましたけど、バタバタした感じのショートではなかったですし。ひとつひとつのミスは大きいものだったと思いますけど、ちゃんと集中しながら、いいコントロールができている状態の演技だったのではないかと思っています」

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る