漫画家・槇村さとる「髙橋大輔の『白鳥の湖』が忘れられない」 (3ページ目)
(ステファン・)ランビエール(※5)もよかったですね。ちょっといい男だったし(笑)。彼は本当に踊りだけでいい。最近はジャンプの回転数が注目されますけど、彼は飛んだり、回ったりする必要ないのにと思っていましたから。私、選手としてはそういうタイプが好きなんです。
※5 スイスのフィギュアスケート選手。2006年トリノオリンピックで銀メダルを獲得
そういう意味で、日本男子で好きな選手は髙橋大輔くんでした。彼の魅力は"ダンサー"なところです。ふつう「踊る」と「滑る」は違うもの。でも、彼の場合は、滑って移動していることをあまり感じさせないというのが、すごいところです。たいていはザーッと技があって、つなぎがあってという構成になりますが、彼は曲の中で生きてるっていう感じで、その境目がわからない。私は、彼を本当のダンサーだと思いますね。
本当にいい作品も多いですよね。シーズンごとにまったく違う曲にチャレンジするじゃないですか。私が毎年作風の違う連載をしろって言われたら結構困ってしまいますよ(笑)。
絵のタッチと同じように、本人の体が持っているタッチとか、調子というものは、個人それぞれ限られていると思うんです。合う音楽も決まってきて、みんな勝ちたいから、そういう曲を選ぶでしょう? でも、髙橋くんの場合は、曲と一体化して、自分のものにしてしまうことができる。この人はどれだけの表現力を持っているの!?と思いましたよね。
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