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【ボクシング】中谷潤人のマネージャー・弟の龍人から見た井上尚弥戦 大一番を前にした兄の平常心、宿泊したホテルの一室で聞いた「独り言」 (3ページ目)

  • 林壮一●取材・文・撮影 text & photo by Soichi Hayashi Sr.

【井上の右アッパーに「あぁ、これはやってしまったな」】

入場時の潤人(右)と龍人 photo by 山口フィニート裕朗/アフロ入場時の潤人(右)と龍人 photo by 山口フィニート裕朗/アフロこの記事に関連する写真を見る

 潤人はこれまでの試合と同じように、リングサイドに座る父、母とグローブタッチをし、タラップを駆け上がる。レフェリーの注意を受け、コーナーを出る際、龍人は背中越しに告げた。

「やるだけのことはやってきたから、あとは出すだけだよ! 自信を持っていこう!!」

 龍人は言葉を選びながら、5月2日の東京ドーム対決を振り返った。

「頭を振って、前の手でフェイントをかけて、井上チャンピオンのパンチが届かないポジションを取る。膝を折って相手よりも低く構える。立ち上がりは、想定どおりで非常にいいなと。序盤は、お互いに当たっているパンチがなかったですよね。言ってみれば、僕らの作戦どおりでした。最初のインターバルで僕は、『井上選手のパンチどう?』って訊いたんですよ。そうしたら『大丈夫だけど、速い』と答えました。

 ただ、ポイントがチャンピオンに流れてもおかしくない、とは感じていましたね。潤人は前に出られていなかったので......あの状態のままでは勝てなかった。5ラウンド開始前にルディが『出ろ!』と告げたんです。そこから潤人は追い上げました。ポイントも取れていましたし、あのままの状態で流れ、ノックアウトシーンが生まれればいいなと考えながらリングを見詰めていました。この調子だぞ、と思うと同時に、一瞬も気を抜けない相手だと実感しました。井上選手は一発がありますし。

 何より、『井上選手は攻守にわたってタイミングがいい』と潤人は語っていました。躱(かわ)すことも、パンチを当てることも、コンビネーションもです。10ラウンドのバッティングで、少し相手を休ませてしまったかな......」

 龍人は、第11ラウンドに井上が放った右アッパーが明暗を分けたと述べた。中谷の左眼を窩底骨折に追い込んだ一撃である。

「左のグローブで目を庇いながらサークリングしていましたから、『あぁ、これはやってしまったな』と。傷を負ってしまいましたし、向こうが一枚上手でしたね。ポイントを失っていたので、最終ラウンド前には『倒しにいかないと!自分でチャンスを作っていくんだよ!!』と声をかけました。第12ラウンドも悪くなかったように感じましたが、やはり骨折がキーになりましたね。

 総合的に井上チャンピオンが上回っていたんじゃないですかね。特にスピードです。それと、対応力も。こちらがどんなに仕掛けても、『経験済みなのでアジェストできるよ。こういう場面も対応するように、やってきているんだよ』とでもいうような動きでした」

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