【ボクシング】PFP投票者が示す井上尚弥「PFP1位」の長期政権の可能性 ヘビー級ウシク苦戦とその他の理由とは? (2ページ目)
1.井上が2026年の残りを試合せずに終えた場合、PFP1位の座が脅かされることがあるとすればどのようなシナリオか?
フィッシャー : すでにPFPトップ5に入っている選手が、同じくPFPランカーを相手に特別なパフォーマンスを見せる必要がある。シャクール・スティーブンソン(PFP3位/WBOスーパーライト級王者/アメリカ)がデビン・ヘイニー(PFP8位/WBOウェルター級王者/アメリカ)を圧倒するような勝ち方をすれば、多くのメディアやファン、特にアメリカのファンが、シャクールをウシクや井上の上に置き、PFP1位に推すようになる可能性はある。ただ、私はその試合が今年、実現するとは思っていない。
実現の可能性があるのはデビッド・ベナビデス(PFP5位/世界2団体ライトヘビー級・世界2団体クルーザー級王者/アメリカ)対ドミトリー・ビボル(PFP6位/世界3団体ライトヘビー級王者/ロシア)だろう。しかし、ベナビデスがビボルを一方的に圧倒する姿は想像できない。そのカードはスタイルの異なる五分五分の対戦だと思うし、ベナビデスがライトヘビー級の体重を作るのに苦労するようなら、むしろビボルに分があると思う。結局のところ、今年は誰もが「適切な相手」と戦い、その上で「PFP1位を奪うに値するパフォーマンス」を見せることはできないのではないか。だから私は、今年のうちに井上を1位から引きずり下ろす選手は現れないと思う。
ゴンサレス : ここ数年、井上はリング誌のPFPランキングに入っている選手のなかでも最もアクティブな選手のひとりだった。だから、今年の残りを休養に充てるのであれば、それは十分に報われるべきことだと思う。では、その間に彼の1位の座が脅かされるシナリオがあるかと言えば、なかなか難しい。
可能性があるとすれば、スティーブンソンがヘイニーを12ラウンドにわたって完全に支配し、さらに5階級制覇王者になるようなケースだろう。もうひとつ考えられるのは、ベナビデスがビボルをKOする場合だ。それは非常に大きなインパクトを持つ勝利になる。なぜなら、ビボルは史上屈指の強打者であるアルツール・ベテルビエフと2度戦い、いずれも最終ラウンドまで持ちこたえた選手だからだ。
アブラモビッツ : 私は、井上が今年試合をしなくてもPFP1位の地位を失うとは思わない。私ならそのまま1位に置き続ける。彼のレジュメ(実績)は、ほかの誰よりも頭ひとつ抜けていると思うからだ。
杉浦 : すでに挙げられているスティーブンソン、ベナビデス以外に、レジュメが高く評価されるウシクの存在は依然として軽視できない。もともとクルーザー級王者でありながら、すでにタイソン・フューリー、アンソニー・ジョシュアら、当時のヘビー級の王者級をそれぞれ複数回にわたって下した実績は驚異である。何より、ウシクがほぼすべての重要試合を自国外で行なってきたことはもっと特筆されて然るべきだ。最新のバーホーベン戦の出来は残念であり、3位以下へ落とすことも検討されたほどだが、「キックボクサー相手にモチベーションが上がらなかったのでは」という見方が選定委員の中でも大多数だった。
今年後半、ウシクが"マイク・タイソンの再来"とまで呼ばれる売り出し中のモーゼス・イタウマに勝つようなことがあればまた1位復帰だろう。イタウマとの新旧対決の早期実現はまずないとしても、27戦全勝19KOのWBC暫定王者アギット・カバエルを圧倒すれば、一定数の選定委員がウシクの再浮上を推すことは考えられる。もっとも、39歳になったウシクは直近の7年中6年で1年1戦しかしていない。カバエル戦があるとしても2027年に持ち越しの可能性は高そうではあるのだが。
著者プロフィール
杉浦大介 (すぎうら・だいすけ)
すぎうら・だいすけ 東京都生まれ。高校球児からアマチュアボクサーを経て大学卒業と同時に渡米。ニューヨークでフリーライターになる。現在はNBA、MLB、NFL、ボクシングなどを中心に精力的に取材活動を行なう
2 / 2


