禁断の「全女式押さえ込みルール」で露わになった宝山愛の感情 長与千種は「ガチという言葉は薄っぺらい」 (4ページ目)
【プロレスにおいて"真剣勝負"とは何か?】
全女式押さえ込みルールは、実力勝負である。簡単な言葉で言うならば、"ガチ"ということだ。しかし長与は「ガチとかガチじゃないとか、そういう言葉で収めないでほしい」という。
「技をなくして押さえ込みだけで勝つというのは、至難の業なんです。プロレス式に言うと、高角度からスープレックスを決めたほうがよっぽどラク。食材がないのに『フルコース料理を作れ』と言われているようなものです。ガチという言葉は薄っぺらいですよ。もっと深いところで私たちは経験しているんです。リングに立つということ自体が、真剣勝負なんです」
総合格闘家であり、プロレスラーでもある青木真也は、「真剣勝負とは、存在を懸けているかどうか」という言葉を残している。格闘技にも真剣勝負の試合はあるし、真剣勝負じゃない試合もある。プロレスにだって真剣勝負の試合もあるし、真剣勝負じゃない試合もある。
私たちファンも、「簡単に」プロレスを観てはいけないと思った。もちろん気楽に楽しむのもいいが、それでも簡単に観てはいけないと思った。なぜなら選手たちにとって、プロレスは簡単ではないからだ。
全女式押さえ込みルールは専門誌が記事にすることが難しく、話題になりにくい。プロレスにおいて「勝敗が完全に実力で決まる」という点も、リスクが大きい。それでも長与はこれからも続けていきたいと考えている。感情を出すのが苦手だった宝山があれほどまでに泣き狂うのを目にしたら、続けない手はないだろう。
禁断の押さえ込みルールが、またひとつプロレスの可能性をこじ開けた。
【プロフィール】
宝山愛(ほうざん・あい)
2003年8月15日、愛知県安城市生まれ。2019年12月28日、マーベラス横浜ラジアントホール大会にて、試合前の公開プロテストに合格。2021年3月6日、「Assemble」Vol.4にて神童ミコトとのシングルマッチで、17歳にしてデビュー。2024年1月12日、暁千華と全女式押さえ込みルールでシングルマッチを行ない、敗れたものの、これまでになく感情を剝き出しにし、観客の心を掴んだ。154cm、55kg。X:@aihouzan0306
【大会情報】
■マーベラス新宿大会
■日時:2025年4月10日(木) 18:30開場 19:00開始
■会場:新宿FACE
■詳細:大会日程 | 女子プロレス団体「Marvelous」マーベラス
■対戦カード:彩羽匠vs. 里村明衣子、他
【写真】マーベラス 宝山愛フォトギャラリー
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