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マーベラスの「陰」の存在になっていた宝山愛が、「令和のクラッシュ・ギャルズ」暁千華を相手に見せた異常な試合 (4ページ目)

  • 尾崎ムギ子●取材・文 text by Ozaki Mugiko

 そんななか、昨年末、マーベラスでふたりの新人がデビューした。赤い水着を着た暁千華と、青い水着を着た彩芽蒼空。まさに"令和のクラッシュ・ギャルズ"である。

 特に暁は驚異の身体能力とプロレスセンスを持ち、業界内でも「里村明衣子以来の逸材が現れた」と噂になった。長与が彼女に、自分と同じ「千」という字を与えたこと。そして、自分と同じ赤い水着を着せたことからも、並々ならぬ期待が伺える。

 宝山愛はどうなるのか――。そんな心配をしたファンが、何人いたのかはわからない。しかし令和のクラッシュ・ギャルズの誕生によって、宝山の立場がますます危うくなるのは火を見るよりも明らかだった。そんな時、宝山と暁のシングルマッチが組まれた。今年の1.4である。

 暁はこの日、宝山を相手に初勝利を挙げることを宣言。試合が始まるやいなや、ものすごい剣幕で宝山を張り倒し、「立てよ!」と言い放った。

 宝山の精神状態が心配だった。ここで負けてしまったら、彼女はプロレスをやめてしまうかもしれない。しかし彼女は立ち上がった。"ガチ"という言葉を使っていいのかわからないが、この日の彼女の闘いはガチだった。ガチの感情――おそらく悔しくて悔しくて、殺意に近いような感情を、彼女は露にした。誰の目にも、この試合は「異常」だった。

 幼少期に抱いた強烈な感情というのは、ふとした時に蘇ってくるものである。幼い頃、親族に包丁をつきつけた時の感情が、彼女の中で蘇ったのかもしれない。「てめえ、殺すぞ!」――この時、彼女は暁に対して再びそう思ったのではないか。

 結果はドロー。そして、全女式押さえ込みルールでの再戦が決定した。もし新人の暁に負けたら、今度こそ彼女は本当にプロレスをやめてしまうかもしれない。『おそらく、彼女は負けるだろう』と思った私は、彼女の最後になるかもしれない試合を見届けようと、1月12日、横浜へ向かった。

(後編:禁断の「全女式押さえ込みルール」で露わになった宝山愛の感情 長与千種は「ガチという言葉は薄っぺらい」>>)

【プロフィール】
宝山愛(ほうざん・あい)

2003年8月15日、愛知県安城市生まれ。2019年12月28日、マーベラス横浜ラジアントホール大会にて、試合前の公開プロテストに合格。2021年3月6日、「Assemble」Vol.4にて神童ミコトとのシングルマッチで、17歳にしてデビュー。2024年1月12日、暁千華と全女式押さえ込みルールでシングルマッチを行ない、敗れたものの、これまでになく感情を剝き出しにし、観客の心を掴んだ。154cm、55kg。X:@aihouzan0306

【大会情報】

■マーベラス新宿大会
■日時:2025年4月10日(木) 18:30開場 19:00開始
■会場:新宿FACE
■詳細:大会日程 | 女子プロレス団体「Marvelous」マーベラス
■対戦カード:彩羽匠vs. 里村明衣子、他

【写真】マーベラス 宝山愛フォトギャラリー

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