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マーベラスの「陰」の存在になっていた宝山愛が、「令和のクラッシュ・ギャルズ」暁千華を相手に見せた異常な試合 (3ページ目)

  • 尾崎ムギ子●取材・文 text by Ozaki Mugiko

【令和のクラッシュ・ギャルズの出現】

 小学校1年生から中学1年生まで、空手を習っていた宝山。「運動神経は平均的」と言うが、前転や後転など基本的なマット運動は最初からできた。練習は厳しかったものの、彩羽、桃野美桜、Mariaらに「愛ちゃん、愛ちゃん」と可愛がられ、楽しい練習生時代を過ごした。

 コロナ禍でデビューが遅くなり、入団から2年後の2021年3月6日、「Assemble」Vol.4における神童ミコト戦でデビューした。逆エビ固めでギブアップ負けしたが、ようやく観客の前に出て高揚感を味わった。

 宝山愛というリングネームには、「リングの中の宝を見つけてほしい」という願いが込められている。

「素敵な名前をつけていただいたことに感謝していますが、プレッシャーも大きかったです。『自分、どうしていったらいいんだろう?』と思い悩むこともあるけど、考えるとダメになるタイプ。思うがままプロレスを楽しんでいたら、答えはきっとリングにあると思っています」

 デビュー2戦目は、3月10日、マーベラス新木場大会。橋本千紘&愛海&岡優里佳vs. 桃野美桜&Maria&宝山愛という6人タッグマッチだ。宝山はデビュー2戦目にして早くもメインイベントに抜擢され、彼女自身、「期待されている」と感じていたという。

 しかしその後、目立った活躍をすることはなかった。頑張っているのは伝わってくるのだが、観客の心を揺さぶる何かが足りない。ある日、彼女のもとにファンレターが届いた。便箋4枚にわたり、丁寧な字で、「体が細いから、あなたのプロレスを観るのが怖い。別の道に進んだほうがあなたのためになる」と書かれていた。涙が込み上げてくるのを必死で堪えながら、ゴミ箱に捨てた。

 2023年5月3日、後楽園ホール大会におけるAoi戦でシングル初勝利を飾るも、話題にはならなかった。マーベラスの絶対的エースである彩羽、"天才"と名高い桃野の陰に隠れ、宝山は第1試合でそつなく試合をこなす日々が続く。

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