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井上尚弥に完敗したフルトンが陣営を一新して復活 フェザー級での再戦の可能性に「いくつかの秘策がある」 (2ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke

【新コーチの指導による変化】

 現在30歳のフルトンをよく知る関係者から、「フルトンの記事を書くなら話しておいたほうがいい」と紹介を受けたベテラントレーナーがいる。2007年以降、フルトンの故郷であるフィラデルフィアを拠点に、ボクサーのストレングス&コンディショニング(S&C)コーチとして活動を続けるロブ・アコスタだ。

フルトン(右)のトレーニングを指導するアコスタ(写真提供:ロブ・アコスタ)フルトン(右)のトレーニングを指導するアコスタ(写真提供:ロブ・アコスタ)この記事に関連する写真を見る

 アコスタは2019~22年に、現IBF世界ウェルター級王者ジャロン・エニス(アメリカ)のトレーニングキャンプに同行。今回のフィゲロアとの再戦から、正式にフルトンのS&Cコーチに就任し、調整を手助けすることになった。

「私は対戦相手に合わせて筋力とコンディショニングの計画を立てる。フィゲロア戦に備え、"スクーター(フルトンの愛称)"の瞬発力を増すトレーニングとフットワークのエクササイズを重視した。とにかく手数を出してくるフィゲロアの古典的なメキシカンスタイルに対抗するため、ハンド・アイ・コーディネーション(目の動きと手の反応を協調させること)を鍛えるプログラムも重点的に取り入れた。今回の努力は功を奏し、"スクーター"はいい仕事をしてくれたよ」

 アコスタのそんな言葉どおり、フィゲロア戦でのフルトンは下半身に落ち着きが感じられ、パンチも的確だった。カストロ戦と比べてコンディションは確実に向上していたに違いない。また、新たなS&Cコーチを導入した狙いは戦術への効果だけではなかったようだ。ボクサーの減量方法も熟知するアコスタは、より的確なウエイトコントロールの方法も指南したという。

「一般的に、年齢を重ねるごとに減量は難しくなるが、私の専門知識を加えることで身体に負担をかけずにそれを行なった。多くのボクサーは全力疾走をすると体重が落ちると思っているが、大事なのは心拍数を一定に保つこと。また、(フルトンの)食事の習慣も変わり、より慎重に食べるようになったね」

 フルトンは試合間に体重を増やすことで知られ、一部の関係者は「減量を開始する前の体重はミドル級くらい」と述べていたほど。カストロ戦時、フェザー級でも体重調整は苦しく、トレーナーのワヒード・ラヒーム氏は「フェザー級には長居はしない」と明言していた。

 それが、フィゲロア戦後には「もうしばらくフェザー級で戦えそうだ」と意見が変わった。その背後に、フルトンをさまざまな形でサポートしたアコスタの存在があったことは明らかだ。

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