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井上尚弥に完敗したフルトンが陣営を一新して復活 フェザー級での再戦の可能性に「いくつかの秘策がある」 (3ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke

【井上との再戦を目指して】

「"スクーター"がジムを走り回っていたアマチュア時代から顔見知りだが、トレーニングキャンプに招かれたのは今回が初めてだった。井上に負けた後、"スクーター"は自身を見直そうとした。陣営も変化させ、再び前に進もうとしたのは適切な考えだったと思う」

 アコスタがそう振り返ったように、井上に完敗したあと、フルトンが行なったのは新しいS&Cコーチの採用だけではなかった。

フルトンと家族のような関係だったワヒード・ラヒームがチーフトレーナーからサブに代わり、ジャロン・エニスの父親でもあるボージー・エニスが新チーフに就任。これまでフルトンを支えてきたラヒーム、ハムザ・ムハマドも陣営に残り、新加入のエニス、アコスタと共により分厚い陣容で復活を目指した。

 プライドの高いフルトンがこのような軌道修正を進めたことからも、井上戦のKO負けがどれだけショッキングだったかは伝わってくる。必要なアジャストメントを施した新生"チーム・フルトン"は機能し、今後が楽しみになってきた。

 もちろん1試合の成功で先を急ぎすぎるべきではないが、このままフェザー級の世界タイトルを守り続ければ前述のとおり、さらなる重要な試合が視界に入ってくる。世界王座にこだわりをみせる井上がフェザー級に上がった時、再戦が話題になっても驚くべきではないだろう。

"対戦相手に合わせて、筋力とコンディショニングの計画を立てる"。そんなポリシーを持つアコスタに、最後に井上対策を問うと嬉しそうに笑ったが、やはり明かしてはくれなかった。それでもその言葉からは、密かな自信が垣間見えた。

「井上はすごいボクサーであり、私も彼の大ファンだ。ただ、もし"モンスター"と対戦することになったら、私にはいくつかの秘策があるとだけは言っておきたい。ここでは、その秘密を明かすつもりはないがね」

"井上vsフルトン2"の話をするのはまだ早すぎるが、軽量級を彩ってきたタレントの復活は業界にとっていいニュース。特に"モンスター"の米リングでの戦いをもう一度盛り上げるとするなら、アメリカ人の強豪はどうしても必要な存在になる。新たな名参謀の力を借り、フルトンがどこまで再浮上できるかを楽しみにしたい。

著者プロフィール

  • 杉浦大介

    杉浦大介 (すぎうら・だいすけ)

    すぎうら・だいすけ 東京都生まれ。高校球児からアマチュアボクサーを経て大学卒業と同時に渡米。ニューヨークでフリーライターになる。現在はNBA、MLB、NFL、ボクシングなどを中心に精力的に取材活動を行なう

【写真】 雪平莉左フォトギャラリー

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