井上尚弥の防衛戦を田口良一が語る 井上尚弥&中谷潤人と拳を交えた元世界王者はこの先のビッグマッチも展望
【急遽、チャレンジャーが変更になった井上】
WBA/WBC/IBF/WBOスーパーバンタム級チャンピオン、井上尚弥(31歳)の次戦が2025年1月24日に催される。IBFとWBOの指名挑戦権を持つオーストラリア人、サム・グッドマン(26歳)が左目の上を負傷して、キャンセル。前座に出場予定だったWBO11位の韓国人ファイター、キム・イェジョン(32歳)を相手に4冠統一戦が行なわれることとなった。
グッドマンは2018年4月にプロデビューし、母国のフェザー級、WBOオリエンタルのスーパーバンタム級、IBFインターコンチネンタルの同級タイトルを獲得しており、今回が世界タイトル初挑戦となるはずだった。2022年5月11日には、日本の富施郁哉(26歳・第76代日本バンタム級王者)に判定勝ちしている。
その富施が所属するワタナベジムから生まれた3人目の世界王者であり、日本タイトルを懸けて井上尚弥と拳を交えた元WBA/IBFライトフライ級チャンピオン、田口良一(38歳)が語った。
2013年8月25日に井上尚弥(左)と対戦した田口良一 photo by Hiroaki Finito Yamaguchiこの記事に関連する写真を見る
田口にとって井上戦は、日本タイトルの初防衛戦だった。フルラウンドを打ち合って判定負けを喫したが、それ以降、「『対戦相手に、井上くんほどの強さはない』という思いでリングに上がったからこそ、世界のベルトを巻き、WBAタイトルを7度防衛できた」と振り返る。
一方の井上も、ノニト・ドネアとの第1戦まで、「自分が拳を交えたなかで、最も強かったのは田口さん」という言葉を残している。
「グッドマンはまとまりがあって、すばらしい選手だなという印象でした。左ボディとショートのワンツーがいいですよね。ともに瞬間的なスピードが見えました。
でも、井上くんの勝ちは揺るがなかったでしょう。グッドマンも、ほかの人に挑戦すればチャンスありと感じますが、井上尚弥が相手となると、勝つのは難しい。いいパンチを持っていますが、井上くんにはなかなか当たらなかったんじゃないかな。ところどころでヒットする場面もなくはなかったでしょうが、自分はチャンピオンが圧倒するシーンしか思い浮かばなかったです。
序盤、井上くんが様子を見て、中盤にノックアウトすると予想していました。彼はどんなパンチでも、相手を倒せますよね。今回は、顔面へのパンチでフィニッシュすると思っていました」
元WBA/IBFライトフライ級チャンプは、常に井上の活躍を我がことのように喜ぶ。決して大言壮語はしないが、2013年8月25日に死力を尽くして闘ったあの日を誇りに感じていることが伝わる。田口は、"モンスター"井上尚弥が唯一ダウンを奪えなかった男である。
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著者プロフィール
林壮一 (はやし・そういち)
1969年生まれ。ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するもケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。ネバダ州立大学リノ校、東京大学大学院情報学環教育部にてジャーナリズムを学ぶ。アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(以上、光文社電子書籍)、『神様のリング』『進め! サムライブルー 世の中への扉』『ほめて伸ばすコーチング』(以上、講談社)などがある。