井上尚弥の防衛戦を田口良一が語る 井上尚弥&中谷潤人と拳を交えた元世界王者はこの先のビッグマッチも展望 (3ページ目)
田口は言う。
「中谷くんともスパーリングをやったことがあります。自分が世界チャンピオンだった頃のはずですが、ほとんど覚えていないんですよ。サウスポーとやったということは、2016年4月のファン・ランダエタ戦の前かな......本当に、ほぼ記憶にないんです。
ただ、巧さが際立っていた憶えはありますね。もし採点されていたら、ポイントを失っていたんじゃないかな。"強い"より"巧い"選手で、『あぁ、この子は世界チャンピオンになるだろう』と感じました。今後、4階級目を狙うんですよね。これほど何階級も制覇するとは想像していなかったです。井上くんと同じで、彼も予想を超えた場所に到達しているなと」
おぼろ気な田口の記憶どおり、2016年に行なわれたスパーリングだとしたら、中谷にとってプロデビューからおよそ1年後のことだ。東日本新人王戦を控えた"4回戦ボーイ"ながら、すでに世界チャンピオンの胸を借りるどころか、存在感を示していたことになる。井上が世界タイトル2階級を制し、WBOスーパーフライ級タイトルの2度目の防衛戦を控えていた頃だ。
28戦全勝 25KOの井上と、29戦全勝 22KOの中谷は5歳違いだが、対峙する運命にあったのかもしれない。
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中谷は、2023年5月にWBOスーパーフライ級でタイトルを獲得した試合あたりから、「自分のやりたいボクシングが実戦で出せるようになってきました」と語る。
そんなWBCバンタム級チャンピオンの言葉を耳にした田口は、うなずき、冷静に話した。
「自分も、スパーリングでやれていたことが、なかなか本番で出せない時期がありました。緊張しすぎていたり、上体が高かったり、スタミナが足りなかったり......、力を発揮するのに、デビューから15、16戦ほどかかりましたね。
中谷くんは『パフォーマンスが出せるようになった』と発言しているんですよね。それって、まだまだこれから強くなるってことですよ。発展途上なんでしょう。このレベルでは終わらず、数段上にいくはずです」
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