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朝倉海の一本負けを「世界のTK」髙阪剛が分析 勝負を分けた「ふたつのポイント」とは? (3ページ目)

  • 篠﨑貴浩●取材・文 text by Shinozaki Takahiro

――離れ際の攻防といえば、開始から1分近くの場面。海選手が左を差してパントージャ選手を金網に押し込んだあと、一度離れようとしましたが、パントージャ選手はすかさず足をかけて倒しにきましたね。

「非常に計算された動きだったと思います。パントージャは組んでいる際に、海選手が逃げる方向もコントロールしていて、バランスを崩すタイミングを見逃さずに足払いを仕掛けていました。

 パントージャは右手で海選手の首を捉えて、ヒジを下げていました。海選手からすると、その肘が邪魔で出たい方向に出られない。かといって押し込もうとしても肘が邪魔で押し込めないから、一度分かれざるを得なくなった。その瞬間、パントージャは右手で海選手の頭を下げて、足が浮いたタイミングで足払いを仕掛けたんです」

――2ラウンドでも、同じように離れ際で足をかけるシーンがありましたね。

「1ラウンドでパントージャは、『この動きが効く』と確信したんだと思います。流れのなかで出せば海選手が対応できないことを体で記憶した。ただ、2ラウンドはバックを取るため、足をかける位置が変わっています。

 映像では1ラウンド目の足払いは切れてしまっていますが、おそらくはくるぶしのあたりを狙って払う、柔道で使う技術だったと思います。それが2ラウンドでは高い位置、ふくらはぎのあたりに引っかけていました。倒すのではなく崩しだけで、素早くバックに回る狙いがあった。海選手の体勢が崩れて、反転してくれればバックを取れるという計算があったのでしょう」

【チョークが決まるまでの攻防戦】

――1ラウンド目は、パントージャ選手にとって海選手の力量を測るラウンドでもあったのでしょうか?

「そうだと思います。海選手がやれること、やれないことを見極めていた。それで、離れ際やスクランブルでの足払いが効くことはわかったんでしょう。5ラウンドをフルに戦う展開を常に頭で描いていると思います。

 もちろん、早いラウンドで『イケる』と思ったらフィニッシュを狙ったでしょうけどね。1ラウンド、海選手の反応は後手ではあったものの、極めきるところまでは無理だと判断したんじゃないかと。海選手が立ち上がったあとも深追いしなかったのは、それもあるんでしょう」

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