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女子プロレス界のトップ、彩羽匠が抱く決意「長与千種の遺伝子が里村明衣子で終わってほしくない」 (3ページ目)

  • 尾崎ムギ子●取材・文 text by Ozaki Mugiko

【マーベラスの選手に怪我が多い理由】

 2022年9月16日、永島千佳世とのタッグでAAAWタッグ王座も獲得。二冠王となったが、10月下旬、試合中に鎖骨を複雑骨折してしまう。全治3カ月と言われ、シングル王座を返上した。

 これまでにも何度も大きい怪我を乗り越えてきた。怪我の治りは早いほうで、全治10カ月と言われたところ、8カ月で完璧に治して復帰したこともある。今回も「早く復帰できるだろう」と高を括っていたら、なかなか治らなかった。復帰戦が決まっても、延期にせざるを得なかった。段々とプロレスに対して恐怖心が募り、引退も考えた。

 彩羽をはじめ、マーベラスの選手は怪我が多い。同団体の桃野美桜はその理由について「100%を出し切って、100%受けきっているから怪我をする」と分析していたが、彩羽は「自分たち、調子に乗っちゃうんですよ」と言う。

「たとえば子供向けのイベントの時は、『子供たちとわちゃわちゃしながら楽しくやってくださいね』というコンセプトのはずなのに、試合が始まったらお互いに引かないし、どんどんエスカレートする。そういうことばっかりやってるから、蓄積もあって怪我をしやすい。プロレスって本当にすごいなと思うのは、自分の余力が100だったとしても、お客さんの声援があると120を超えちゃうんですよ」

 欠場から4カ月半後に復帰したものの、常に怪我の恐怖はつきまとった。それでも闘うことをやめず、2023年8月、アメリカのWest Coast Pro Women's Championshipを戴冠し、12月にはスペインのRCW女子世界王座を奪取した。彩羽は「世界のベルトコレクターになりたい」と野望を語る。

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