女子プロレス界のトップ、彩羽匠が抱く決意「長与千種の遺伝子が里村明衣子で終わってほしくない」 (2ページ目)
【ライバル橋本千紘との死闘「自分の殻をひとつ破った」】
プロレスは対戦相手あってのスポーツである。彩羽は「今の女子プロレスを変えなければいけない」という使命感を抱きつつも、長与に教わったプロレスを持て余しているようなところがあった。同じような志を持つ相手がいなければ、彼女が本当に表現したいものを表現することはできない。
そんな彼女の前に現れたのが、センダイガールズプロレスリングの橋本千紘である。身長157cm、体重は100kg級。日本大学レスリング部の主将を務め、世界学生選手権3位という実績の持ち主だ。2021年11月28日、センダイガールズ15周年記念大会にて、彩羽は橋本の持つセンダイガールズワールドシングルチャンピオンシップに挑戦。死闘を繰り広げた。
「コロナ禍でお客さんの反応がわからなくて、シーンとなる怖さがすごくあった時期だったんです。本来だったらピリッとした空気を楽しみたいところを、恐怖心に負けて大きい技に移行するということが多かったんですよね。でもあの試合では、スタートの時になかなか行けない。組んだらなかなか離れられない。お互いそこを試している感じがありました。『ひとつミスったらやられるな』という感覚でしたね」
結果は、30分ドロー。勝つことはできなかったが、コロナ禍で失われつつあった自分のプロレスができた、という手応えがあった。
年明けの1月10日、マーベラス後楽園ホール大会にて再戦が行なわれた。AAAWシングル王座とAAAWタッグ王座、AAAW王座全権を懸けたシングルマッチである。必殺技ランニングスリーを返された彩羽は、この日のために研究していたランニングパイレーツを出そうとした瞬間、恐怖心から鼻血が出た。「自分の殻をひとつ破った気がする」と振り返る。
「プロレスの醍醐味でもあるけど、(身長170cmの)自分が小さい選手とやれば盛り上がるのは当たり前なんですよ。体が大きい橋本選手もそれは経験していると思うんですよね。小さい選手をどう潰すか、という闘いには慣れている。でも大きい者同士の闘いは苦手分野なんですよ。だからお互い、めちゃくちゃ頭を使いながら試合をして、最後はもう気力で闘って、なんとか勝てた感じです」
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