【箱根駅伝2026】早大がルーキー3人起用の出雲駅伝で2位好走 今季こそ「選手層の薄さ」を克服できるか?
3区で各校のエースと渡り合ったスーパールーキーの鈴木琉胤 photo by SportsPressJP/Aflo
【予定通りにルーキーが好走】
10月13日の出雲駅伝で早稲田大が2位に入り、幸先のよい駅伝シーズンのスタートを切った。
「戦力的に、今回は優勝争いを狙えるチャンス。3人の1年生に期待していますし、前が見える位置でアンカーの工藤(慎作・3年)に渡す展開になればいいかなと思います」
レース前、花田勝彦監督は自信に満ちた表情でそう話していた。今季の早大は前評判が高い。鈴木琉胤、佐々木哲、堀野正太ら力のあるルーキーが入学し、足りないピースを埋めるようにチーム力を底上げした。
主力も元気だ。主将の山口智規(4年)は箱根駅伝後にオーストラリアで走り込み、6月の日本学生対校選手権では1500mと5000mで2冠を達成。7月の日本選手権でも1500mで2位、さらに同月のホクレン・ディスタンスチャレンジ千歳大会では5000mで13分16秒56と自己ベストをマークし、早大記録を更新するなどトラックシーズンでは好調を維持した。
工藤も4月の記録会で5000mの自己ベストを更新すると(13分54秒36)、7月のワールドユニバーシティゲームズ(ドイツ)でハーフマラソンの金メダルを獲得した。さらに今年の箱根駅伝総合4位に貢献した間瀬田純平(4年)、長屋匡起(3年)、山口竣平(2年)らもおり、近年になく選手層が厚くなった。冒頭で紹介した花田監督のチームへの期待は、彼らが成長したという自信から生まれたものだった。
出雲では、期待のルーキーたちとダブルエースが活躍した。3区鈴木、4区佐々木、5区堀野という1年生3人による襷渡しは、早大OBである花田監督の学生時代、1991年の第67回箱根駅伝で実現した1区武井隆次、2区櫛部静二、3区花田の"三羽烏"以来、実に34年ぶりのことだった。
3区を走った鈴木は駒澤大の桑田駿介(2年)に付かれながらも振りきり、ラストでは城西大のヴィクター・キムタイ(4年)に競り負けたが、創価大のスティーブン・ムチーニ(3年)、中央大の溜池一太(4年)ら各校のエースが集うなか、区間5位にまとめた。4区の佐々木は区間6位ながら順位をひとつ上げて2位になり、堀野は区間7位、アンカーの工藤に3位で襷を渡した。
花田監督は、3人の走りはほぼ予定通りと語る。
「鈴木は、熱中症になりながら最後までよくがんばったと思います。佐々木は、前半突っ込んで入って後半伸びなかった。本人は行けるかもと思ったらしいですけど、そんなに甘くなかった。でも、いい経験になったと思います。堀野は、あの位置で襷をもらったので、前半から突っ込まざるを得なかったので難しかったですね。ただ、今後も彼らを使える目処がついたのは大きいですね」
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著者プロフィール
佐藤俊 (さとう・しゅん)
1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)、「箱根5区」(徳間書店)など著書多数。近著に「箱根2区」(徳間書店)。

