【箱根駅伝2026】「気づいたら國學院。後半の國學院」出雲駅伝2連覇の裏にあった「区間配置の妙」と「前半区間の好走」
2連覇を達成した出雲駅伝で強さを見せつけた國學院大(左から1区青木瑠郁、2区尾熊迅斗、3区野中恒亨、4区辻原輝、5区高山豪起、6区上原琉翔) photo by スポーツ報知/アフロ
前編:出雲駅伝2連覇に見る國學院大学の強さとは
学生三大駅伝の初戦となる出雲駅伝は、前年度に2冠を達成した國學院大学の圧勝で幕を閉じた。3区で流れをつかむと、4区からは独走。アンカー勝負も見据えて6区に配置された主将の上原琉翔は、2連覇をアピールする余裕のVサインでフィニッシュテープを切った。2位に38秒差をつけた國學院の強さとは、どこにあったのか――。
【"攻撃区間"がないと、駅伝は勝てない】
ほとんど狙いどおりの襷リレーだった。2年連続3度目の出雲制覇を果たした前田康弘監督は、確かな手応えを得ていた。
「気づいたら國學院。後半の國學院。持ち味を出し、自分たちの駅伝を見せることができたと思います」
思い返せば、2019年の初制覇はアンカー区間で逆転優勝。昨年度に2冠を達成した出雲、全日本大学駅伝でも後半区間に巻き返し、タイトルをさらっている。
目を引くのは、区間配置の妙。今回、オーダーで最後まで悩んだのは2区と4区だった。2区にエース格である3年の辻原輝を置く案もあったものの、最終的には自らの直感を信じた。監督就任は17年目。國學院の指揮官として、出雲駅伝に8回、全日本大学駅伝に11回、箱根駅伝には14回出場しており、酸いも甘いも経験してきた。
「『これは絶対に4区だ』と風向きを読みました。2区の尾熊迅斗(2年)で耐えて、4区の辻原で攻めようと。やっぱり、"攻撃区間"がないと、駅伝は勝てないんで」
1区の青木瑠郁(4年)から5位で襷を受けた尾熊は落ち着いていた。三大駅伝は初めての出走となったが、自らの役割をよく理解している。スピードが問われる最短区間(5.8km)の2区。競い合う相手は、三大駅伝で実績を残してきた選手ばかりである。すぐ前を走る創価大の小池莉希(3年)がぐんぐんとペースを上げても後ろにつくことはない。後ろから猛烈な勢いで迫ってきた早稲田大の山口智規(4年)に追い抜かれても、焦ることはなかった。
「周りに惑わされないようにしようと。前半はあまり突っ込みすぎず、後半勝負に持ち込んで、勝ちきるつもりでした。前田さんから『レースの流れを読んで、自分でマネジメントしながら走れ』と言われていましたから」
短いようで長い5.8km。集団から離れず、想定どおりの展開でレースを進めていく。ラストにさしかかると、予定どおりペースを上げる。3区の中継所まで、歯を食いしばって腕を振った。5位の順位を守ったまま、前が見える位置まで迫り、区間6位の力走を見せた。
「最後まで自分の走りに徹しました。僕は主役ではないので。先輩たちにいい思いをしてもらいたくて」
初の大仕事を完遂した2年生の顔は、安堵感にあふれていた。
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著者プロフィール
杉園昌之 (すぎぞの・まさゆき)
1977年生まれ。サッカー専門誌の編集記者を経て、通信社の運動記者としてサッカー、陸上競技、ボクシング、野球、ラグビーなど多くの競技を取材した。現在はジャンルを問わずにフリーランスで活動。

