井上尚弥がスポンサー契約を結んだ、サウジアラビアの「リヤド・シーズン」への期待と懸念 (2ページ目)
今回の件でリヤド・シーズンは日本でもより身近になり、他国での評判が気になっているファンが多いだろう。サウジのボクシング参入は賛否両論があるのも事実。ただ、11月上旬に米国内の興行のリングサイドでメディアや関係者に話を聞いた限り、今では好印象を持っている人も少なからずいるようだった。
「サウジの資金投入によって多くのビッグファイトが実現するようになった。それは業界にとってポジティブなことだ。トゥルキの介入がなければ、ベテルビエフ対ビボル戦のようなビッグファイトは実現し得なかった。
ボクシング界は今後、若手スターの発掘と育成の術を探っていかなければならないし、ラスベガス、ロサンゼルス、ニューヨークのようなアメリカ国内の舞台で大興行が行なわれるのは重要なこと。それに関しては様子を見ていかなければいけないが、少なくともここまでは好感触ではある」
フィラデルフィア在住のベテランライターであり、『リングマガジン』のPFPランキング選定委員のひとりでもあるアダム・アブラモビッツ記者のそんな言葉は、代表的な意見に思える。
【"犬猿の仲"のプロモーターの壁も資金力で解決】
最もわかりやすい例として、ベテルビエフ対ビボル戦は「アメリカのリングでは実現不可能」と目されていたマッチアップだった。
ロシア人王者同士の対決はマニア垂涎のカードではあっても、米国内での興行的な大成功は期待できない。しかも、ベテルビエフはトップランク社の傘下で、ビボルはマッチルームスポーツ社と関係が深い、という所属プロモーターの違いもあった。リヤド・シーズンはそんな難しいカードにも大枚を叩き、力技で挙行にこぎ着けてしまった。
ヘビー級のウシク、フューリーのリマッチも、ふたりに合計1億ドル以上をつぎ込んだサウジの介入がなければあり得なかった。"犬猿の仲"とされていたマッチルーム社のエディ・ハーン氏(ウシクの提携プロモーター)と、クイーンズベリー・プロモーションズのフランク・ウォーレン氏(フューリーのプロモーター)に手を組ませたのは驚異的だ。オイルマネーのパワーによって、ボクシング界に存在してきた"プロモーターの壁"を一時的にでも取っ払ったことは、アルシェイク長官の最大の功績と言えるのかもしれない。
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