ウナギ・サヤカが語るスターダム解雇とその後 全日本プロレスへの参戦、長与千種の指導などで大飛躍 (3ページ目)

  • 尾崎ムギ子●取材・文 text by Ozaki Mugiko

【「強い人と闘いたい」という純粋でシンプルな闘争心】

 気持ちが切り替わったのは、10月16日、ディアナ後楽園ホール大会のメインイベント。ギャン期に入って2戦目のことだ。ウナギ・サヤカ&佐藤綾子&中森華子&ななみ vs. 井上京子&井上貴子&神取忍&タイガー・クイーン。そこで神取忍の入場シーンに衝撃を受けた。

「入場曲がかかると、お客さん全員が『神取忍を待ってます』みたいな感じになって。人をこんなにワクワクさせられるなんて、『すげえな、プロレスラー!』って思ったんですよ。スターダムでは『勝たなきゃ、勝たなきゃ』って思ってたけど、(2022年7月30日開幕の)5★STAR GPを2勝10敗で終えて、『(プロレスで大事なのは)勝たなきゃとか、そういうんじゃないんだろうな』と思い始めたところでの、あの試合。これは、楽しまなきゃ損だと思いました」

 神取はLLPW-Xの代表取締役を務めているが、レスラーとしての試合数は少ない。年に何人かしかいない対戦相手のひとりに選ばれたことに、ウナギは高揚した。しかも井上京子、井上貴子、タイガー・クイーンという超豪華なメンバーだ。ただただ楽しくて仕方がなかったという。スターダムに対して、「私はもうこの人たちとやってますよ」と見せつけたい気持ちもあった。

 11月20日、センダイガールズプロレスリング(以下、仙女)後楽園ホール大会で、橋本千紘&優宇の「チーム200キロ」と1vs.2ハンディキャップマッチに挑んだが、惨敗。その後、橋本とシングルマッチを行なったが、プロレス史上、稀に見るボロ負けだった。

 コロナ明けの仙女後楽園ホール大会。橋本はメインイベンターを務めたが、空席が目立ち、試合後のマイクで涙を流すひと幕があった。ウナギはそのシーンがずっと頭から離れなかったという。

「"強さの象徴"みたいな人なのに、『あんなに強くても、そんなことで泣くんだ!』と思ったんですよ。あの日に初めて、橋本千紘の人間っぽいところが見えた気がして、闘ってみたいと思ったんです。『チーム200キロ』とのハンディキャップマッチは、ギャン期のなかでマストでした。あんなに怖い思いをすることはなかなかないけど、本当にやってよかった」

 ギャン期の当初、「スターダムに戻りたい」という気持ちがあった。スターダムに向けて試合をしているようなところもあった。しかし次第にウナギのなかで、「強い人と闘いたい」というプロレスラーとしての純粋でシンプルな闘争心が生まれていった。

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