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強さに悩んだ女子レスラー「チーム200キロ」の優宇 目指すは、男子選手が「こいつなら打っても壊れないな」と思ってもらえる体 (3ページ目)

  • 尾崎ムギ子●取材・文 text by Ozaki Mugiko

【転機になった鈴木みのるとの異種格闘技戦】

 2020年10月4日、仙女新宿FACE大会にて、チーム200キロは松本浩代&DASH・チサコが保持するセンダイガールズワールドタッグチームチャンピオンシップに挑戦。勝利して第10代王者となった。

 2022年8月11日には、PURE-J後楽園ホール大会で中森華子を破り、PURE-J認定無差別王座を奪取した。そうして複数のベルトを持つなかで、「もっと刺激がほしい」と思うようになった。

「『誰と試合したい?』と言われた時に、すごく失礼なんですけど、パっと出てこないというか......。すでにいろんな選手とやってるな、と思っちゃうことがあって。何か"未知との遭遇"をしたいと思っていた時期に、鈴木みのる選手とのシングルマッチが決まったんです」

 2022年8月21日のハードヒット川崎大会で、鈴木との「プロレスvs柔道」の異種格闘技戦が組まれた。エニウェア畳ルールで、移動式畳を導入。場外を含め、いかなる場所でも畳の上では柔道ルールが採用されるという試合形式だ。

 鈴木が女子レスラーと試合をする際、いつもなら鈴木が相手を圧倒する。しかしこの試合の鈴木は序盤から優宇を警戒し、逃げ回る展開を見せた。陽が落ちた旧川崎球場で、ナイター照明がドラマチックに会場を照らした。

「その試合は忘れられないですね。チョップで胸が真っ黒になった跡が、10日間くらい取れませんでした。私は100%の力で向かっていって、鈴木さんはそれをすべて受け止めてくれた上で、しっかり叩き潰してもらった。自分にはまだまだ足りないものが多すぎるということを、言葉じゃなくて、しっかり体に叩きこまれました。『自分には伸びしろがあるな』とも思えましたね」

 コロナ禍で海外での試合スケジュールがストップし、優宇の中で時間が止まっていたような感覚があった。試合はしているが、自分のしたいことがわからない。しかし鈴木との一戦で、「自分が本当にやりたいこと」を考えるようになった。

「男子選手と向き合える体づくりをしようと思いました。やっぱり男子の一発は重いんです。でも、100%の力で打ってきてほしいんですよ。『こいつなら打っても壊れないな』と思ってもらえる体でいたいです」

【「自分の体だからこそ見せられるものを見せたい」】

 今年1月から、海外の動画で知った「ストロングマン」のトレーニングを始めた。ストロングマンとは重い物を持ち上げる競技だが、ウェイトリフティングではバーベルを持ち上げるのに対して、ストロングマン・コンテストでは大会ごとに競技内容やルールが異なる。タイヤを持ち上げたり、車やヘリコプターを引っ張ったりすることもある競技だ。

 4月20日、優宇は「SBD Apparel Japan Present STRONGESTMAN&WOMAN 2024 統一予選コンペティタークラス女子の部」に出場し、優勝。10月に開催される全国大会で、日本一のストロング・ウーマンを目指す。「レスラーとしても、ひとりの女性としても、夢や目標を途絶えさせることなく挑戦し続けていく」と話す。

 今年はもっと、海外にも挑戦していきたいという。EVEインターナショナルのベルトを1年以上保持しているが、ベルトを保持しながら、今年はYMZイギリス大会を開催するためにも頑張りたいと考えている。「海外の強豪たちと闘うことで、もっともっと高みを目指したい、強くなりたい」という気持ちが強まってきている。

 プロレスをやる上でのポリシーは、「体を全部使うこと」――。

「体重を有効に使ったプロレスをしたいんですよ。じゃないと、『なんのために太っているんだ』と思うので。フェニックス・スプラッシュはできないですけど、自分の体だからこそ見せられるものを見せたい。説得力のある試合を続けたいです」

 かつては個性がないことに悩み続けた。強すぎるあまりファンから応援されず、孤独を味わった。しかし今、彼女ほど個性のあるプロレスラーは、そういない。彼女ほど誰からも愛され、応援されるプロレスラーも。

プロレスにおける「強さ」とは何か。優宇というレスラーの生きざまが、その答えを物語っているような気がする。

【プロフィール】
●優宇(ゆう)

1991年7月19日、千葉県船橋市生まれ。小学校5年生の時、DDTビアガーデンプロレス観戦をきっかけにプロレスラーを志す。受け身の練習のために始めた柔道で、インターハイ、国体、ジュニアオリンピック出場など、輝かしい成績を残す。2016年1月4日、後楽園ホール大会でデビュー(対のどかおねえさん)。9月、山下実優を下し、TOKYOプリンセス・オブ・プリンセス王座を獲得。2018年12月、東京女子プロレスを退団。2019年4月、プロレスリングEVEの所属となる。2020年10月、橋本千紘とのタッグ「チーム200キロ」でセンダイガールズワールドタッグチームチャンピオンシップ王者となる。2022年11月13日、EVEインターナショナル王者となり、現在も防衛中。156cm、100kg。X:@yuu_tjp

【大会情報】
小橋建太プロデュース興行『Fortune Dream9』
■日時:6月12日(水)17:30開場 18:20試合開始
■場所:東京・後楽園ホール
■対戦カード:橋本千紘&優宇vs. 里村明衣子&彩羽匠

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著者プロフィール

  • 尾崎ムギ子

    尾崎ムギ子 (おざき・むぎこ)

    1982年4月11日、東京都生まれ。上智大学外国語学部英語学科卒業後、リクルートメディアコミュニケーションズに入社。求人広告制作に携わり、2008年にフリーライターとなる。プロレスの記事を中心に執筆し、著書に『最強レスラー数珠つなぎ』『女の答えはリングにある』(共にイースト・プレス刊)がある。

【写真】「チーム200キロ」女子プロレスラー・優宇フォトギャラリー

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