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「神の左」山中慎介が見た那須川天心 KOできない理由、目指すべきボクサー、武居由樹との違いについても語った (2ページ目)

  • 篠﨑貴浩●取材・文 text by Shinozaki Takahiro

【相手を「倒しきる」ための課題】

――今回、天心選手は8ラウンドを戦いましたが、スタミナやペース配分に関してはどう見ましたか?

「序盤にダウンを取り、ほぼ勝ちは間違いないという中で、本人もKOを求められている空気を感じたと思います。どう倒すか、迷いがあるのは感じましたね。試合後の会見で、セコンドに『どうやって攻めればいいですかね』と聞いたことを明かしていましたし、スタミナ的には問題はなかったと思います。後半はペースが落ちたというよりも、相手の崩し方、フィニッシュまでの持っていき方で少し戸惑った感じですかね」

――そのあたりは、経験値によるものでしょうか?

「そうですね。キックの試合では、流れの中でダウン取って3ラウンド、長くても5ラウンドで終わるのでその先の展開はなかった。でも、今年はボクシングの初戦で6ラウンド、今回は8ラウンドをフルに戦いました。お客さんのKOへの期待は別にしても、本人にとってはすごく勉強になった14ラウンドだったと思います」

――これから目指すスタイルについては、いかがでしょう?

「すべての精度をさらに上げて、ゆくゆくはKO勝利ができるスタイルを目指すことになるんでしょう。ただ、今回もダウンを取った後のアプローチや、相手がガードを固めてきた時の対応など、いろいろ課題が見えました。その課題にどう取り組むかをプラスに考えて、期待したいです」

――課題はやはり、「倒しきる」ということでしょうか。

「はい。そうは言っても、ガードが固い相手をKOするのは簡単なことではありません。長谷川穂積さん(元世界3階級制覇王者)も、世界チャンピオンになるまでKO率はそれほど高くありませんでした(19戦17勝4KO2敗)が、王座を14度防衛していた絶対王者のウィラポンに判定で勝って以降(2005年4月)、次第にKO勝ちを量産していきました。

 僕自身もそうでしたよ。2011年3月の岩佐(亮佑)選手との試合(日本タイトル戦。王者・山中が10ラウンドTKO勝利)が成長のきっかけとなって、KOを量産できるようになりました。ですから天心も、何かきっかけをひとつ掴むことで、流れが変わる可能性があると思います。

 天心はデビュー戦で日本バンタム級2位の与那覇(勇気)選手や、今回のメキシコ国内王者との試合では、勝利は当たり前で『いかにKOするか』を期待されていた状況。当然プレッシャーはありますよ。まぁ、本人はそれを楽しんでいると思うんですけど。試合を乗り越えていくことで変わっていくことはある思います」

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