女子プロレスラー KAIRIは、なぜヨットのU-22日本代表からスターダムに入ったのか (3ページ目)

  • 大楽聡詞●取材・文 text by Dairaku Satoshi
  • 立松尚積●撮影 photo by Tatematsu Naozumi

――ヨットを始めた時もそうでしたが、自分の足りない部分を克服しようとしたんですね。

KAIRI:私は小さい頃からコンプレックスの塊でしたから。なんとか認められたい気持ちがあったんだと思います。

――その後、2011年8月にスターダムの練習生になるわけですが、どんな経緯があったんですか?

KAIRI:舞台を観に来てくれた人たちが、涙を流して「すごくよかった」と言ってくれて、「もう少し舞台をやりたい」と思ったんです。それで両親に、「就職の内定を辞退して、好きなことを1年やらせてほしい。もしダメならもう1回就活する」からと直談判しました。

 そんな中でプロレスに誘われたのは、その舞台の後です。私は小柄だし、格闘技経験もない。プロレスは「大きくて筋肉がムキムキじゃないとできない」と思っていたんですが......初めてスターダムを観に行って衝撃を受けました。

 2011年7月24日、スターダムが後楽園ホールに初進出した大会。第1試合が星輝ありささん&まゆさん(岩谷麻優)vs須佐えりさん&鹿島沙希さん。その選手たちが大音量の音楽が流れる中、スポットライトに照らされダンスをしながら入場する姿を見て「えっ?」と驚いたんです。

――想像していたプロレスと違っていたんですね。

KAIRI:でも、可愛いくてアイドルみたいだと思っていたら、試合はなりふり構わず、がむしゃらにやり合っていた。そして勝ったらボロボロ泣いて......その姿にすごく心を打たれました。私は表現することも大好きになっていましたから、「プロレスをやってみたい」と入門することにしました。

【「デビュー戦、誰とやりたい?」の問いに即答】

――スターダム3期生として入門した5カ月後、「宝城カイリ」のリングネームで、2012年1月7日に愛川ゆず季戦でデビューすることになります。

KAIRI:プロテストに合格した後に、寮でスターダム代表のロッシー小川さんから、「デビュー戦、誰とやりたい?」と聞かれたので、「愛川ゆず季さん」と即答したんです。デビュー戦は厳しい人がいい。愛川さんなら、遠慮せずに"蹴りきって"くれると思いました。

――その愛川さんのデビュー戦の相手は高橋奈七永選手。顔の形が変わるくらい愛川さんもやられましたね。

KAIRI:そうでしたね。私は愛川さんに蹴られて、開始30秒で鼻血が出たのを覚えています。蹴られて頭がロープにぶつかって、すごい衝撃でした。「これからこんな日々が始まるんだ」という思いが頭をよぎって。デビューできた達成感と、「これから私、大丈夫かな」という不安が入り混じりました。

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