引きこもり、のち「天才」。女子プロレスラー岩谷麻優の始まりは妄想だった (4ページ目)

  • 尾崎ムギ子●文 text by Ozaki Mugiko

――どんな変化があったんですか?

「それまでは非現実的な恋愛とかがメインだったけど、『プロレスラーになった自分』を妄想するようになったんです。こんな技を使って、こんなコスチュームを着て、とか。ドラゴンゲートの選手の入場曲が入ったCDを買って、これを自分の入場曲だと思おう、とか。そういう中で、お兄ちゃんがプロレス観戦に誘ってくれた。それが本当に久しぶりの外出でした」

――お兄さんは嬉しかったでしょうね。

「ですかねぇ? 妹がプロレスにハマるとは思ってなかっただろうし。その時の席は、最前列の一番端の通路側だったんです。本当はやっちゃいけないんですけど、テンションが上がりすぎて選手の体をベタベタ触ったりして、純粋にプロレスにハマった自分がいました」

――純粋にプロレスが好きでデビューする女子レスラーは、最近では珍しい気がします。

「女優さんの卵みたいな人がいっぱい入ってきますし、『プロレスは観たことないです』っていう選手も多いですね。自分がどうとかじゃないんですけど、プロレスが好きで入った人とそうでない人とでは、動き方も考え方も全部が違います」

――だから、岩谷選手は成長スピードが速いんですね。

「練習で技を教えてもらう時に、例えばボディスラムとかも、プロレスを観ていない人は手をどこにやるとか、わからないと思うんです。でもプロレス好きな人は日常的に観ているわけだから、『あ、これはあの選手がやってた技だ』とか、『こういうふうに投げるんだよな』っていうのが、頭の中でイメージが湧く。全然違いますね」

――飯伏幸太選手に似ているなぁと感じます。飯伏選手も「頭の中でイメージできた技は100%できる」とおっしゃっていました。

「いろんな人に例えられるんですよね。飯伏さんに似てると言われることも多いし、(獣神サンダー・)ライガーさんにはオカダ(・カズチカ)さんって言われるし。団体での立ち位置的には棚橋(弘至)さんのような部分もあるし。だれが一番近いんだろうなあ?」

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