バレエとアイドルで感じた絶望。女子レスラー中野たむは劣等感と闘い続けた (4ページ目)

  • 尾崎ムギ子●文 text by Ozaki Mugiko

「モンゴルさんに『アイドルレスラーごときが、プロレス舐めてやってんだろ?』って言われた時に、私はアイドルレスラーの代表として闘わなきゃいけないと思いました。私がここでくじけたり、ちょっとでも甘い部分を見せたら、アイドルレスラーを名乗っている人たちに迷惑が掛かっちゃう。それがすごく嫌だったから、搬送されても命を懸けてでも、このリングで闘い抜いてやるって強く思いました」

 大仁田厚から「リングは生き様を見せる場所」だと教わった。大仁田は多くを語らない。試合後にひと言アドバイスをくれるくらい。そんな中でも、プロレスラーとして自分はどう生きるべきか、中野は感じ取っていった。

 2017年11月1日付で、スターダムに入団。入団理由として、会見でこんなことを話している。「スターダムの頂点に立ちたいし、プロレス界の頂点に立ちたいし、プロレス界のもっと先の頂点がスターダムでなら見られると思った」――。

「自分の身ひとつでは、先が見えないと思ってたんですよね。スターダムに入ったら、新しい景色が見えると思った。でも、いざ入ったら先には先がありすぎて、きっと終わりがない。私が今描いている先にいったら、その先が絶対にあるし、永遠に未完成のまま終わらないんだろうなって途方に暮れています」

 スターダムに入団してから、なかなかシングルのベルトが取れない日々が続く。「やっぱりここでも駄目なんだ」と思った。バレエも駄目、アイドルも駄目、プロレスも駄目。自分にはやはり才能がなかったんだと何度も思った。何度もやめようと思った。

 そんな時、大切なパートナーができた。星輝ありさだ。

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