『呪術廻戦』の虎杖悠仁が駆使する躰道とは? 達人がバトルと作品の魅力を語る
「特集:なぜ『呪術廻戦』にハマるのか」
(6)証言者:中野哲爾(躰道家)
「呪術」と「バトル」を掛け合わせ、水面下に巡る策謀なども見どころの人気漫画『呪術廻戦』(週刊少年ジャンプで連載中)。第121話で、主人公の虎杖悠仁(いたどり・ゆうじ)が、呪霊の真人(まひと)を相手に"躰道(たいどう)"の技である"卍蹴り"を放つシーンが登場した。今回はその"卍蹴り"、そして"躰道"とはどのようなものなのかをひも解き、『呪術廻戦』におけるバトルを武道の視点から読み解くため、躰道で世界四連覇を果たした達人・中野哲爾さんに話を聞いた。
躰道で世界四連覇を果たした中野哲爾先生――そもそも、躰道とはどのような武道なのでしょう?
「琉球空手から発展し、戦後に発案されたものです。戦闘中というのは「受けると致命傷になる攻撃」というのがあるので、攻撃を受けないために、全身を駆使して攻撃を避けながら、相手を攻撃していくという特徴があります。」
――ということは、躰道は「実戦的」ということでしょうか?
「実戦的かどうかということのであれば、ルールがなければないほど実戦的です。ただ、本当の意味で実戦的となると、1対1というシチュエーションそのものが現実的じゃないんですよね。本当に戦いに勝ちたかったら、数を多くして高いところや隠れられる場所に陣地を取って相手にわからないところから攻撃するのがベストです。なので、1対1の競技はそもそも実戦を排除しているんですよね」
――そうなると、武道の中での躰道の特徴というのは?
「勝った負けたの先の世界を作るために武道があるんです。それが武術と武道の最大の違いです。最終的には自分の振る舞いによって住みやすく、理不尽に何かを奪われない社会を作れるのが武道の効用かなと思います。なので、武道というのは習得することでものすごく強くなるというものではないんです。
そして、武道の中で身体操作に特化したものが躰道なんです。人間の体の動きというのは、『旋』(旋回)、『運』(跳ねる)、『変』(倒れる)、『捻』(捻じる)、『転』(縦回転)の五つに集約されます。この五つの動きの中で相手を見る、体を動かす、というのが躰道の特徴です」
――『呪術廻戦』でも身体操作の描写がたびたび登場します。ここから本題である『呪術廻戦』のことをお聞きできればと思いますが、作品自体はご存知でしたか?
「僕の経営している整骨院の患者さんや道場生が『卍蹴りが出ましたよ!』って『週刊少年ジャンプ』を持ってきてくれて。ジャンプで育ってきたので、作品に躰道が登場してうれしかったですね。『卍蹴り』だけではなくて、『躰道の』とつけてくれていたので、全国の躰道家も躰道キッズもみんなうれしかったと思います。それをきっかけに作品に興味を持ち、漫画やアニメを見始めました」
1 / 4