『呪術廻戦』の虎杖悠仁が駆使する躰道とは? 達人がバトルと作品の魅力を語る (4ページ目)

  • 満島エリオ●取材・文 text by Erio Mitsushima

――バトルシーンというと動きの思考回路などは描かずにアクションだけを見せるケースが多いですが、『呪術廻戦』は考えてから動く、という表現が特徴ですね。

「虎杖が真人を相手にした時に『コロコロ形を変えやがる』『締めや投げからの組み立ては考えない方がいいか?』(28話)と思うシーンがあって、それも面白いと思いました。人間ではない呪いという敵に対して、『投げたり掴んだりはまずい』と言わせることによって、こちらも『なるほどね』と思うんですよね。僕らは呪霊と戦ったことがないので、そういう描写があることによって、呪いとの戦いというものが想像しやすくなります」

――中野先生がもし『呪術廻戦』に出てくる呪霊と戦うことになったらどうしますか?

「もう塩とか投げたいですね(笑) 。ちょっと戦いたくないです。形が変わるっていうのが厳しいですね。想像が追いつかないし、"これもあるかも"と想像することが迷いになってしまうので。

相手の攻撃に逆らわない、応変風靡(おうへんふうび)というのがあるのですが、通用するとしたらそれくらいでしょうか。よく護身術でもありますが、相手の力を利用したり、筋力勝負ではないポジションの取り合いをするんですよね。花御との戦いで東堂が手を叩くと虎杖との位置が変わる術式(不義遊戯=ブギウギ)のシーンがありますが、手を叩いても変わらない場合もある、というのも工夫が凝らされているなと思いました。あれはまさに位相の話です」

――花御からすると、色んな攻撃の可能性があるというのがやりづらいポイントになるのでしょうか?

「まさにそうですね。花御が『思考が追いつかない』と感じている描写がありましたね。野球とかも同じで、ダルビッシュ有(パドレス)さんは変化球が多すぎて、バッターからすると何がくるかわからないですよね。『わからない』というのは『諦め』に近い感情なので、相手に『わからない』と思わせられればかなりラッキーです。手数が多いというのは武器ですね。

――本日はありがとうございました!

「芥見先生には『ありがとうございます。何か参考にしたい技がありましたらいつでも呼んでください』とお伝えしたいです。あとは、虎杖がいつ躰道に出会ったのか知りたいですね(笑)」

(証言者7:巨人・高梨雄平>>)

中野 哲爾(なかの てつじ)
1979年生まれ、愛媛県出身。船橋躰道会己錬館館長。千葉大躰道部の監督。2005年に初めて世界選手権に出場し、個人法形競技にて金メダル獲得。2013年の世界選手権では個人法形競技4連覇を達成。全日本法形、実戦同時優勝を唯一三度達成、年間最優秀選手賞10度選出。

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