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川井梨紗子が貫く信念。
レスリングの「最強エース」は攻め続ける (3ページ目)

  • スポルティーバ●文 text by Sportiva
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki



 また同時に、世界で最もレベルの高い代表争いのなかでメンタル面も磨かれた。

 復帰した伊調と初対決となった全日本選手権。逆転負けを喫した川井は「やっぱり馨さんには勝てない。レスリングをやめようか......」とも悩んだという。

 だが、そこから立ち直った。あとがない土壇場で、川井は伊調以上に勇気を持って攻め続けた。

 国民栄誉賞を受賞し、前人未到のオリンピック5連覇に挑む伊調を応援する国民の声は予想以上に大きかった。卒業後も練習拠点とする至学館大の監督であり、日本レスリング協会強化本部長でもあった栄和人氏のパワハラ問題にも翻弄された。計り知れないプレッシャーだっただろう。

 しかし、どんなに追い詰められても、川井は前を見て、最後まであきらめずに戦い抜いた。

 ほぼノーマークだった前回大会とは違い、世界中の選手が川井を研究し、対策を練り上げてくる。リオのようにはいかないことは百も承知のはずだ。

 2019年の世界選手権前、川井はこう言い切った。

「馨さんに勝った者として、ここで負けるわけにはいかない」

 相手が「打倒・川井梨紗子」で来るならば、それを凌駕する強さを身に着けるしかない。姉妹で挑むからこそ、がんばれることもあるだろう。川井は大きな夢に向かって突き進む。

「オリンピックで連覇してこそ本物」

 伊調馨、吉田沙保里という偉大なる大先輩の背中をずっと追いかけてきた川井梨紗子は、そう自分に言い聞かせている。

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