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川井梨紗子が貫く信念。
レスリングの「最強エース」は攻め続ける (2ページ目)

  • スポルティーバ●文 text by Sportiva
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki



「東京オリンピックは妹・友香子(至学館大)とともに出場を果たし、姉妹でメダルを獲得する!」

 女子レスリングでは、2004年アテネ大会と2008年北京大会に伊調姉妹が同時出場。両大会で姉・千春が48キロ級・銀メダル、妹・馨が63キロ級・金メダルに輝いた以来の偉業挑戦である。

 ただ、川井姉妹は伊調姉妹と違い、ふたりの体重差は大きく開いていなかった。そのため、3歳年下の妹・友香子を62キロ級にして、自分は57キロ級へ下げる決断をする。

 前回のリオ大会、川井はオリンピックに出場するために階級を63キロ級に上げて、伊調との代表争いを回避した。しかし今回、その道を避けては通れない。それでも、川井は「姉妹同時オリンピック」という夢を果たすべく、高らかに公言した。

 結果はご存知のとおり。

 2018年12月の全日本選手権では伊調に敗れたものの、半年後の2019年6月に行なわれた全日本選抜選手権では見事リベンジ。さらに7月の世界選手権・代表決定プレーオフでも勝利して出場権を獲得し、9月にカザフスタンで行なわれた世界選手権で優勝。東京オリンピック代表に内定した。

 一方の妹・友香子も、姉との壮絶な練習で著しい成長を遂げた。2018年全日本選手権と2019年全日本選抜選手権を制覇し、世界選手権で銅メダルを獲得。姉・梨紗子に続いて東京オリンピック代表に内定し、次は「姉妹でオリンピックメダル獲得」に挑む。

 川井と伊調の戦いは、8カ月に及ぶ熾烈なものだった。そのなかで、川井は何を掴んだのだろうか?

 川井の強さは、パワーあふれるタックルにある。逆にネックは、ここ一番でもろいディフェンスだ。川井はあえてウィークポイントには目をつぶり、自らの武器を徹底的に磨いたという。その結果、女子レスリングの最高傑作と評されてきた伊調のディフェンスを崩してポイントを奪取し、ついに勝利した。

「馨さんに崩されてポイントを奪われても、それ以上に攻めて1点でも上回ればいい」

 川井はその信念を貫いた。

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